小泉今日子×福岡伸一「"アイドル"と動的平衡」 どんどん壊して、新しくつくり変えていく
人間の体は蚊柱のようなもの
小泉 以前にも一度対談したことがありますよね。
福岡 ええ。あの対談は『エッジエフェクト(界面作用) 福岡伸一対談集』(朝日新聞出版)という本に収録されましたね。
小泉 あっ、『エッジエフェクト』、そうだ、そうだ。そのときに人間は蚊柱みたいだというお話が出て、それは納得がいくというお話をしたんですよね。
福岡 そうです。人間の体はかちっとした個体みたいに思われているけれど、じつはたえまなく入れ替わっているんです。蚊柱のようなものです。蚊柱は柱みたいに見えますが、柱ではない。出ていく蚊がいれば入ってくる蚊もいて常に入れ替わっているんですね。
人間の体もじつは環境から絶えずエネルギーが流れ込んできて、やがてまたそれがどんどん環境に戻っていくということを繰り返しています。
消化器の上皮細胞などはすごい速度で入れ替わっていて、2、3日で新しい細胞と古い細胞が入れ替わります。ウンチの主成分の一つはそういった古い細胞で、じつは自分自身(笑)。
小泉 そうか。そういうお話だったので、それはすごいなと。私はいつも自分自身に辻褄が合ってないと思ってたんですよ。
福岡 一貫性がないという意味ですか。
小泉 はい。昨日は「明日、ここに行こう」と思っていたけれど、今日起きたら「私、行きたくない」みたいに感じることがあって……。みんなはどうして行けるんだろうと思ってたんですよね。
なので福岡先生に「毎日、違う自分だ」っていわれて、「そうか、それはすごく生きやすくなるぞ」と思ったんです(笑)。