底を脱した楽天、株主たちが語った「安堵と不満」 株主総会での注目点はモバイルから財務戦略に

拡大
縮小

一方、楽天が今回無配を決めたことに不満の声も上がった。今期以降の配当の見通しを問われた三木谷氏は、「財務強化を行い、株価を上げていくことが、株主の皆様にとって1番だ」と述べるにとどめ、具体的なコメントは避けた。

10人の株主からの質疑応答を終えた後、総会は大きな波乱もなく、1時間24分で幕を閉じた。

総会では、提案された3つの議案がすべて承認された。今後の資金調達に向け、議決権や普通株式への転換権のない「社債型種類株式」を新たに発行するために定款を変更し、取締役と監査役の選任も決まった。

他方で総会後に開示された臨時報告書によると、三木谷氏の取締役再任への賛成率は82.16%と、昨年(89.50%)より7ポイント余り低下した。楽天は昨年5月に公募増資と第三者割当増資で3000億円規模の資金調達を実施している。翌月に開示された変更報告書では、直前まで34.21%だった三木谷氏による楽天の実質的な株式保有率が28.01%まで低下しており、今回の結果にも影響したとみられる。

株主が吐露した会社説明に対する不安

会社側の説明に対し、株主たちはどんな印象を持ったのか。総会終了後、50代の株主は、「モバイルは質問もなく、厳しい声はなくなりつつある。業績が改善したことで安心感が出てきている」と語った。

ただ、先行きへの不安が払拭されたわけではないという。「キャッシュフローについて質疑や説明があったが、中長期的に本当に大丈夫なのか、確信を持てない内容だった。社債償還も2025年については、説明がフワっとしていて、見えてこなかった」(同株主)。

同じく財務戦略に最も関心があったという60代の株主は、「2025年の社債償還も全然問題ないとまで言い切って、全体的に自信がみなぎっていて非常にびっくりした」と振り返る一方、「そうした姿勢とは裏腹に配当は苦しそうだし、総会の会場を本社に移したのも、経費削減ということだと思う。そういうところに、何となく財務の不安定さを感じる」とも漏らした。

山梨県から訪れたという70代の株主は「配当がゼロなら来年までに株価を1000円くらいまで上げてほしい。三木谷氏のビジョンはわかったので成果を見せてほしい」とまくしたてた。

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT