桜の季節を襲う「ホテル価格高騰」、3つの裏事情 東京や京都は1年で5割上昇、「値上げの弊害」も
インバウンドの増加やコストアップという外部環境の要因はすぐに収まりそうにない。ホテル各社はコロナ禍で行った借入金の返済があるため、しばらくは利益重視の販売を続けることになりそうだ。つまり当面の間、ホテルの価格高騰は止まらないという訳だ。
こうした追い風を受けホテル各社の業績も絶好調だ。ホテル椿山荘東京を運営する藤田観光は2023年の業績は売上高645億円(前年同期比47.5%増)、営業利益66億円(前年度は40億円の赤字)と営業利益は2019年の2.8億円を大きく上回った。そのほかの企業も業績の急回復を予想している。
一方で、値上げによる弊害も徐々に現れ始めている。観光庁が発表をしている宿泊旅行統計調査によれば、2023年10~12月の日本人の延べ宿泊者数(宿泊人数×宿泊数)は、2022年の同期間を下回った。
延べ宿泊者数が前年同期を下回るのは、コロナ禍以降では、GoToトラベルキャンペーンの反動減があった2021年11月以来のことである。「ホテルの客室価格が上昇したため、日本人旅行者が減少する傾向は去年の後半から顕著に出ている」と業界幹部は指摘する。
旅行を敬遠し、ほかのレジャーを選ぶ動きも
東洋大学・国際観光学部の徳江順一郎准教授は、「ホテルの客室単価上昇が続くと、消費者が旅行に近い喜びを得られる代替財に流れる可能性もある」とみる。
高すぎる旅行を敬遠し、テーマパークや映画などほかのレジャーを選ぶということだ。実際、円安と物価高の影響で海外旅行が高騰したため、国内旅行を選ぶ動きはすでに起きている。
足元で起きているホテルの客室単価の上昇の多くは、体験価値の向上ではなく、市場の需給逼迫によって起きている。
徳江准教授は「値上がりをしても、泊まり続けてくれるファンの育成が大前提。会員向けの値下げや客室のグレードアップをするなど、顧客満足度の向上を続ける必要がある」と指摘する。
直近ではコロナ禍で行えていなかった大型改装に踏み切るホテルなども増えている。ホテル各社には消費者に客室単価上昇を納得してもらうための、体験価値の向上が求められる。
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