桜の季節を襲う「ホテル価格高騰」、3つの裏事情 東京や京都は1年で5割上昇、「値上げの弊害」も
ホテルの価格が上がり続ける背景には3つの事情がある。
1つ目がインバウンド観光客の急増だ。水際対策が緩和された2022年10月以降、インバウンド客回復のペースが加速した。
日本政府観光局が発表している「訪日外客統計」によれば、2023年10月に訪日外国人が251万人とコロナ前(249万人)を超えて以降、足元ではコロナ前を超える水準が続いている。
ホテルは自社の客室稼働率や競合の価格などを分析して客室単価を決めている。インバウンド客が増えたことで、東京や大阪など都市部の稼働率が上昇した。
「稼働率」よりも「客室単価」を重視した販売戦略に
2つ目がコストアップの転嫁である。ホテルはフロントや調理など多くのスタッフを必要とする。
コロナ禍で多くのホテルは経営を維持するために人員削減を行ったが、宿泊客が一気に戻ったことで人手不足が深刻となっている。そのためホテルは新卒社員の初任給増額など待遇改善を進めている。
そのほかにも水道光熱費の上昇や客室清掃やリネン会社など委託先への支払い料金の増加などもある。客室の販売価格にこうしたコスト増加分が転嫁されている。
3つ目がホテル会社の経営戦略の変化である。コロナ前までは、客室をどれだけ埋めるかという「稼働率」を重視してきたが、コロナ禍を経て「客室単価」を重視した販売戦略をとるようになった。
ホテルニューオータニの清水肇総支配人も1月に行った東洋経済のインタビューで「無理をして客室を埋めるよりも、売れる日に単価を上げれば収益性は高くなる。(コロナ禍を経て)売り方が変わってきたと思う」と述べている。
同じ売上高だとすれば、「稼働率が高い」よりも「客室単価が高い」ほうがホテルが獲得する利益が多くなる。ホテルでは、一般的に客室1室を販売するごとに客室清掃費用、アメニティ代などが発生する。だが客室単価が上がればこうしたコストは抑制できる。
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