マクドナルド新型クーポン1000万人配信のウラを読む《それゆけ!カナモリさん》

 日本の人口動態の変化は日本マクドナルドにとってフォローの風も吹いている。人口縮小はもはや止めようもないが、2015年までは世帯数の増加が予想されている。ナゼか。それは単身世帯の増加によるものだ。晩婚化、少子化、高齢化・・・結果的に「お一人様需要」が増えている。昨今のマクドナルドの店舗を見れば、一人でも気兼ねなく食事ができる「お一人様用席」を増やしていることがわかるだろう。また、中食需要の高まりや家庭内での個食化もテイクアウト利用を増すことになる。マクドナルドではドライブスルー併設店は昨今、利用が2桁の伸びであるという。その、フォローの風を受けて、さらに売上上昇につなげるために「個別クーポン」が効いてくるのだ。

人口動態や食事に対するニーズの変化という社会的な変化ばかりではない。今、新クーポンをリリースするのは、技術的な成熟度の観点からもタイミングが合っている。前掲の記事の内容にあるように、対象となるのは「約2000万人の会員のうち、おサイフケータイ機能を持った約1000万人が対象」だ。携帯電話はスマートフォンへの買い換えが進んでいる。主力のiPhoneにはおサイフケータイ機能は搭載されていないが、おサイフケータイ機能を利用可能にするFeliCaシール、「電子マネーシール for iPhone 4」がソフトバックBBから発売されている。Android OSを搭載した国内勢も従来の携帯電話=ガラケー(ガラパゴス携帯)の機能を取り込んだ「ガラスマ(ガラパゴススマートフォン)」で巻き返しを図りはじめた。おサイフケータイ機能非対応の携帯電話利用ユーザー1000万人もスマートフォンへの買い換えでクーポンの対象会員となるかもしれない。

先ほどのハレとケで言えば、ケの部分に当たる。地味なインフラ整備。だが、革新的だ。購買履歴を基に商品をレコメンドし、値引きクーポンで購入を促す仕組みが、どこまで顧客の心をつかむことが出来るのか、という観点からも面白い実験になる。アマゾンなどを筆頭にネットではすっかり当たり前になった感があるが、リアルの場面で、人間でなく、システムが購入をレコメンドする仕組みは、あまり聞いたことがない。今回の試みが成功すれば、恐らく野火のように広がっていくのではないだろうか。それは、私たちの消費行動、マーケティング活動を大きく変える可能性を持つし、その応用可能性を考えれば、日本のサービスが世界で一歩抜きんでるチャンスのようにも思える。

商圏が限られている。商圏内人口が縮小している。逆風をはねのけるため300億円を投じた原田マクドナルド入魂の施策が、どのような実を結ぶのか注目である。

《プロフィール》
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2011年07月15日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。

 

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