FIFA、"陽気な小悪党"が生んだ汚職の構造 なぜ14人の関係者が起訴されたのか

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銀行を通して巨額のスポンサーマネーを動かすIOCとは異なり、FIFAは「陽気な小悪党たちによる現金決済」(前出の広告代理店関係者)である。そんな状態に転機が訪れたのは、1994年の米国大会だった。

20世紀初頭、フランスを中心に欧州8カ国がパリで設立したFIFAは当初、営利団体でも非営利団体でもなく、単なる国際任意団体(国際サッカー親睦団体)でしかなかった。が、徐々に加盟国が増え、1930年に始まったW杯の規模も拡大。にもかかわらず、FIFAの“陽気な小悪党たち”は、設立後1世紀近くを経ても公益法人の登記すらしないまま米国大会を迎え、米徴税局から莫大な額の事業税の支払いを命じられた。

これを契機に、FIFAは「商業主義のスポーツイベント」というビッグビジネスに目覚めた。

1998年のフランス大会以前、欧州各国の国営放送を中心とする国際公共放送連合との話し合いで決めていた放映権料を、2002年の日韓大会から代理店による競争入札方式に変更。フランス大会の約2億ドルから約15億ドルに急騰した放映権料は、その後も上昇を続け、FIFAはIOCに匹敵する巨額の収入を手にするようになった。

そして、非営利団体としてスイスで登記。あらためて活動を拡大したのだった。が、組織の体裁を整えても、人の意識は変わらない。結果、米司法当局によって、彼らの犯罪が次々と摘発されることになった。

南アフリカへのW杯招致の際、約12億円の賄賂をジャック・ワーナー元副会長が要求したのをはじめ、放映権を得ようとする代理店などから複数のFIFA理事に賄賂が渡り、総額100億円超の裏金が動いたという。

米国が動いた2つの理由

では、なぜ米司法当局が動いたのか。理由は2つある。

1つは、米国の銀行口座が賄賂の送金に使われたこと。かつて独シーメンスが米国の銀行を介し、中国の政府高官や公立病院関係者に賄賂を送り、米国の裁判所から多額の罰金を科されたことがあった。今回もそれと同じケースで、米国の銀行を介さなければ米当局は動かなかった。

もう1つは、米国には通称「RICO法」という、マフィアなどの組織犯罪を取り締まる法律が存在すること。ゆすり、たかり、強要などにより、何らかの利益と引き換えに金品を要求することを禁じた法律だ。有罪になると、罰金刑もしくは20年以下の拘禁刑、内容によっては最高で終身刑に処せられる。

この法律にのっとった米司法当局の捜査依頼を受け、スイスの司法当局はFIFA総会に集まった容疑者らの身柄を拘束。FIFAで20年以上前から不正が繰り返されてきた証拠を手にしたという。

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