「脱原発」か「25%減」か 迫られる究極の選択

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 天然ガスなどによる火力発電の弱点は、原発に比べて電気料金の上昇が避けられないことだ。エネ研の試算では、原発がすべて停止した場合、石油やLNG(液化天然ガス)などの調達額が12年度には約3・5兆円増え、標準的な家庭の電気料金は18%(月額1049円)上昇する。富士通総研の試算では、20年には電気料金は最大35%上がるという。

原発事故以降、それまで買い手市場だったLNGは、完全に売り手市場となっている。日本の電力会社が調達に奔走しているのに加え、ドイツなどの「脱原発」の動きが、価格上昇に拍車をかけているからだ。

エネ研の十市勉顧問は、「中長期的なエネルギー安全保障のためにも、天然ガス資源の上流権益の確保や輸入源の分散化を進めるべきだ」と指摘する。日本はマレーシア、オーストラリア、インドネシア、カタール、ロシアなどからLNGを輸入している。これらの国との間で、権益の取得も含め、可能なかぎり長期に安定した価格でLNGを輸入できるような体制作りを急ぐべきだ。

鳩山公約をどうするか

「脱原発」に伴うもう一つの課題が、温暖化対策のあり方だ。

従来のエネルギー基本計画では、30年までに温暖化ガスを1990年比で30%削減する目標を掲げていたが、これは見直すことになった。ところが、鳩山由紀夫前首相が09年に国連の場で国際公約した「90年比25%削減(20年時点)」は、簡単に取り下げられない。

国連の下で、12年までの国際的な温暖化ガス排出規制を定めた京都議定書の後を引き継ぐ枠組み作りも時間が迫る。この「ポスト京都議定書」の枠組み作りに関しては、すでにEUや新興国・途上国などの間で駆け引きが始まっている。

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