テスラ買収も浮上、「アップルEV開発」コケた背景 10年間でスター幹部が次々と率いたが…

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「このプロジェクトが始まったとき、アップルだけがホームランを打てるようなものが選ばれた」と、サウスカロライナ大学法学部と工学部の准教授で、アップルとこのプロジェクトについて2015年に話したことがある、ブライアント・ウォーカー・スミス氏は話す、「それから10年後、これは多くのリスクと、ほとんど利益を得ることができないものに変わった」。

2014年にアップルが自動車プロジェクトを立ち上げたとき、同社は自動運転車のアイデアを追い求める投資家、経営陣、エンジニア、企業の大群の中にいた。グーグルがカリフォルニア州の公道でプロトタイプのテストを開始した後、シリコンバレー全体では、自律走行車はすぐに一般的なものになると主張した。アップルは取り残されたくなかった。

「次の大きなプロジェクト」が必要だった

プロジェクトの成り立ちに詳しい3人の関係者によると、当時、同社は“次のプロジェクト”に関するトップエンジニアからの質問に対処していた。アップルはApple Watchを完成させたばかりで、多くのエンジニアは何か新しいことに取り掛かりたいと焦っていた。アップルのティム・クックCEOは、テスラへのエンジニアの流出を防ぐため、このプロジェクトを承認した。

アップルはまた、事業を拡大する新たな手段を見つける必要もあった。同社は今後数年間、iPhoneの売れ行きが鈍化することを予測していた。自動車は2兆ドル規模の輸送産業の一部であり、当時2000億ドル近い事業規模を誇っていたアップルを助ける可能性があるものだった。

プロジェクトに詳しい6人の従業員によると、アップルのCEOから信頼を得ていたにもかかわらず、チームのメンバーは厳しい現実を前にしていることを知っていたという。

仮に市場に出回るとしたら、アップルカーは少なくとも10万ドル以上する可能性が高く、それでもiPhoneやイヤホンと比べると利益は極端に少なくなる。しかも、テスラが市場を席巻してから数年後に売り出されることになってしまう。

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