2023年は、アメリカの長期金利が上昇すると米国株が下落、逆に長期金利下落なら米国株は上昇、という場面が多かった。これは、FRBが経済インフレをしっかり制御できないとの疑念が強かったためだ。株式市場では金利上昇のシグナルが「リスク要因」とみなされた。
FRBに対する市場の信認が高まっている
だが2024年に入り、FRBの想定どおりに利下げを徐々に進める可能性が高まる中で起きている金利上昇は、株式市場にとってリスクとはみなされない。むしろ、FRBの政策対応に対する信認の強まりで金利上昇が起きているのだから、株式市場にとっては悪いことではない。この点が、2024年になって金利が上昇しても米国株が下げない理由の1つである。
もちろん、2024年も経済指標のサプライズで金利上昇が嫌気される場面はあるのだが、インフレ制御に成功しつつあるFRBの政策への信認が毀損するまでには至らない。総じて見れば、FRBが想定するとおりインフレは制御されつつあり、「インフレはアメリカ経済の問題にならない」との構図は崩れないだろう。
株高と金利上昇が併存するもう1つの要因は、もし長期金利4%台前半という現在の金利水準が続いても、アメリカでは経済成長と利益拡大の構図が変わらない可能性が高まっていることだ。2023年10~12月期のアメリカ企業決算は総じて堅調で、事前予想よりも1株当たり利益(EPS)は上方修正された。経済の安定が続き、多くの企業の業績改善が続いていることが、株高と金利上昇の併存をもたらしている。
一方、金利上昇の影響で、昨年まで好調だった個人消費には2024年にややブレーキがかかっている。一方で、金利敏感セクターである住宅市場には底入れ感が出るなど、金利上昇が及ぼす影響はややばらつきがみられている。
それでも、金利上昇や引き締め効果によって、経済活動が急失速するリスクはここにきて低下している。この点が、2024年になってからアメリカで金利上昇と株高が併存している2つ目の理由といえる。
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