清酒、ワイン、食用油……広がるPETボトルの用途、三菱樹脂が白鶴酒造の清酒用で実用化
清涼飲料水用の容器で定番のPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルが、これまでほとんど使われなかったワインや清酒といった酒類向けに拡大を始めている。酒類向け容器の主流であるガラス瓶に比べて劣っていた酸素や炭酸ガスなどの遮断(バリア)性が向上。逆に軽さや破損のしにくさなどを利点とみた酒類メーカーが、徐々に採用に乗り出している。
PETボトルメーカーとして普及に力を入れる企業の一つが、三菱ケミカルホールディングス傘下の主要事業会社の一つである三菱樹脂(東京都中央区)だ。三菱樹脂は、清酒メーカーで最大手の白鶴酒造(神戸市東灘区)と共同で、清酒用PETボトルを商品化する。9月20日に発売する3製品の清酒に三菱樹脂が開発した「ハイバリアPETボトル」と呼ぶ、高機能型のPETボトルが初めて採用されるのだ。
これまで一部の清酒でPETボトルが使われることはあったが、ごくまれなケースだったという。大手清酒メーカーの量産品にPETボトルが本格的に使われるのは、はじめてのことだ。三菱樹脂の酒類向けPETボトルは昨年、商品化したワイン用に続く第2弾となる。
ワインや清酒は容器にガラス瓶や紙パックを使っている。従来のPETボトルは、これらに比べて酸素や炭酸ガスなどのバリア性に劣るため、内容物の品質保持に不安があった。対して、三菱樹脂のハイバリアPETボトルは、真空状態にしたPETボトルにアセチレンガスを充填し、プラズマを発生させることで薄い炭素膜を内面に蒸着させ、酸素などのバリア性を大幅に向上。一般的なPETボトルに比べ、酸素で10倍、炭酸ガスで約7倍などのバリア性がある。
白鶴酒造が採用するPETボトルは1500ミリリットルタイプで、重量は58グラム。同容量のガラス瓶の7~8%程度の軽さながら、品質保持性は同程度。流通過程や店頭、買い物の持ち運びで商品が落下したとしても破損しにくい特長もある。
三菱樹脂はハイバリアPETボトルを2004年に商品化。当初は焼肉のタレなど一部の調味料向けが主体だったが、昨年に食用油とワイン向けにも採用された。今回、清酒用にも実用化が決まったことで、今後はワインや清酒といった酒類メーカーへの積極的な売り込みを進める。ハイバリアPETボトルを生産する浅井工場(滋賀県長浜市)では、2012年春にも現行から生産能力を倍増する計画も進めている(現行能力は非公表)。
(武政 秀明 =東洋経済オンライン)
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