フジ提携のネットフリックス、その真意とは トップが予言する、既存テレビの長期的衰退

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共同記者会見をするフジテレビの大多亮常務(左)と、グレッグ・ピーターズ日本法人社長

フジとの協業については制作費の額や収益配分の仕組みなどは明らかにされていないが、日本のテレビ業界でも昨年秋ごろから、ネットフリックスが複数の会社に巨額の制作費をオファーしていることが公然の秘密として伝えられてきた。

その制作費をテレビ関係者は「毒まんじゅう」と呼ぶ。一時的に満腹にはなるが、その後徐々に力を奪われるのではないか――という不安を抱いているのだ。

実のところ、ネットフリックスは業界の何を変えようとしているのか。リード・ヘイスティングスCEOのインタビュー(4月末取材)をもとに、あらためてその“真意”を探る。

テレビの衰退を誰も気にしない

「既存のテレビは今後20〜30年にわたって、次第に衰退する。消滅するかどうかは分からないが、その衰退を誰も気にはしないだろう」。テレビの未来について、ヘイスティングス氏は前述のように予言した。「テレビはファックスのようなもの。20年前は誰もがファックスを喜んで使っていたが、今はメールに添付するほうがずっと簡単だ。古い技術とは、新しい技術に取って代わられるものなのだ」。

押せばネットフックス視聴画面に切り替わる、専用ボタン付きのリモコンを手にする(撮影:尾形文繁)

ネットフリックスは自社のサービスをインターネットテレビと呼んでいるが、実際に既存のテレビ局もこの新しい動きに乗り遅れまいとしているという。「彼らもネットがすべてを変えつつあることは理解している。誰であれ、ひたすら拡大しているネットに背を向けることは難しい。だから彼らも(ネットフリックスのような)専用のリモコンボタンか、それともアプリを作るべきか検討している」。

だがなぜ、既存のテレビよりも、ネットテレビが支持されるようになるのか。「ネットテレビは高度にパーソナライズされているからだ。早朝4時でも夜10時でも、日曜でも火曜でも、自分の好きな時に見たい番組を楽しめる。きっと将来は、『番組が8時に始まるってどういう意味?』と考えるはずだ。番組を見るためにほかの活動を中断するのはとても変だと考えるようになる」。ゴールデンやプライムといった時間帯の価値が事実上意味をなさなくなるとすれば、広告業界にも大きな影響が及ぶのは確実だ。

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