市場の「見えざる手」による企業の監視は有効か? 企業はなぜ存在し、社会をどう変えてきたのか

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英語以外の言語では、企業を表す語が古代ローマで企業を表すのに用いられていたもとの語ソキエタス(societas)にもっと近いこともある。例えば、イタリア語では、企業はソチェタ・ペル・アッツィオニ(società per azioni)、つまり「株式会社」と呼ばれる。ここに企業の第二の重要な特徴が示されている。すなわち株式と株主の存在だ。

企業が一般の投資家に向けて、株式を発行し、それらの投資家からお金を集められるということは、経営に携わる重役たちの所持金だけでなく、世の中にある広大な資本の海を利用できることを意味する。

さらにもうひとつ、事業を営むうえでたいへん好都合な特徴が企業にはある。それは有限責任という特徴だ。

パートナーシップの場合には、事業が失敗すると、パートナー全員が責任を負うが、企業の所有者は、企業の負債を返済する義務を負わない。株主は株の購入のためにお金を一度支払ったら、あとはもう、事業がどれだけ悪化しようとも、債権者から取り立てを受ける心配はない。

これらの特質を兼ね備えたことで、企業は商業活動を推し進めるとてつもなく強力なエンジンを獲得した。

資本家階級の誕生

実際、これらの特質を併せ持つというのは類例のないことで、18世紀英国の法学者ウィリアム・ブラックストーンは、有名な著書『英法釈義』(Commentaries on the Laws of England)の中でかなりのページをその説明に費やしている。

「企業の特権および免除、地所および財産は、ひとたび企業の所有するところとなれば、以降、新たな後継者にそのつどあらためて譲渡されることなく、いつまでも企業の既得のものであり続ける。なんとなれば、企業の創設から現在に至るまでに在籍した個々の構成員、および将来、在籍する個々の構成員は全員、法律上、一個の人格と見なされるからである。この人格に死というものはない。これはちょうどテムズ川がつねに同じ川でありながら、それを構成する部分は刻々と変化し続けているのと同じである」。

同じく英国の著名な法律家だったサー・エドワード・コークは、もっと簡潔に次のように述べている。企業は「目には見えず、死ぬこともない」。

企業の発展はまったく新しい社会階級の誕生にもつながった。資本家階級の誕生だ。いつの時代にも裕福な人たちはいたが、企業は裕福な人たちにもっと裕福になるための新しい手段を与えた。

富を持つ人はそれをただ蓄えておいたり、贅沢三昧の派手な暮らしに費やしたりする代わりに、企業に投資できるようになったのだ。企業の株主になれば、あとは投資したものが成長するのを高みから見守っていればいい。その成長のために実際に働くのはほかの人間であり、自分ではまったくか、あるいはほとんど何も貢献する必要がない。

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