「日本の議員と深い関係?」スパイ防止法の有効性 中国非公式警察関係先を捜査した狙いとは

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

では、本事案の“私設秘書”に対するスパイ防止法の適用を念頭においた捜査上の考察をしてみたい。

第四条第一号は、私設秘書を対象としてその適用が検討されうるが、その構成要件は、

① 外国に通報する目的をもって、または不当な方法で
(国家秘密を)

② 探知or収集

③ 外国に通報

④ 国の安全に危険を生じさせる

としている。

では「①外国に通報する目的をもって、または不当な方法」はどのように捜査し裏付ければよいだろうか。

「外国に通報する目的をもって」については、私設秘書の行動から、中国当局関係者、または接点を持つ関係者や議員本人との接点・接触時の会話・コミュニケーションなどから、外国に通報する目的を立証しなければならない。

「不当な方法」については、情報の探知・収集行為における不法行為や詐術、脅迫などの不当行為を現認しなければならない。また、情報提供の見返りとして渡す報酬の動きなども着眼点となる。例えば、ここにハニートラップのような性的関係の利用を端緒に脅迫行為や強要行為が行われた時点で不当行為とみなすことができると考える。

一方で、諜報事件の捜査では、被疑者に認知されずに関係者から聴取することは捜査活動自体が被疑者に暴露してしまう危険が高まるため、捜査段階における関係者からの聴取はまったく期待できない。結局、その立証に必要な捜査手法は、これまでと変わらない。

次に「② 探知or収集」を裏付けるには、どうしたらよいだろうか。「探知」については、その行為自体の定義が曖昧であるが、前述のようにその行為自体を現認するか、関係者等との接点や接触時の会話・コミュニケーションから間接的にでも立証を試みるほかない。

「収集」も同様だ。両方の行為について、機密情報の管理履歴やPCのアクセスログなどの着眼点はあるが、例えば議員事務所内で犯行が行われた場合、事務所側に捜査協力を求めること自体が、捜査活動が暴露する危険が高まるため不可能だ。

そして、「③外国に通報」する行為の捜査も同様だ。「④ 国の安全に危険を生じさせる」については、さらに危険を生じさせた結果も裏付けなければならない。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事