健康食品「こんなに効く」が信用できない納得事情 グルコサミンやヒアルロン酸に効果はあるのか?

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タンパク質はアミノ酸が重合した高分子化合物です。トリプシンなどの消化酵素により腸内で分解されることは、ヒアルロン酸やコンドロイチンと同じです。仮に健康食品として10gのコラーゲンを摂取したとします。3000gあるコラーゲンに10g足したとして、どのくらい効果があるかご理解いただけるかと思います。しかも、このコラーゲンを構成するアミノ酸は全て体内で合成されるので、その原料であるアミノ酸が追加されても意味がありません。

コラーゲンのように大量に存在するタンパク質は、経口で摂取しても皮膚や関節、軟骨などに与える影響はほとんどありません。確かにコラーゲンは軟骨を構成する主要な成分ですが、経口で摂取してもその効果は全く期待できないのです。

多くの健康食品の効果は正しいとはいえない

変形性膝関節症に効果があるとする4成分について解説してきましたが、これはあくまで経口摂取して変形性関節炎に効果が期待できないことを説明したにすぎません。ヒアルロン酸のように、注射で関節局部に注射するのであれば、効果は期待できます。また、対象が変形性関節症に対してではなく、美容成分として皮膚への塗布投与であれば、この限りではありません。ものによっては効果を示すものもあるかもしれません。

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私がこの項目でお伝えしたいのは、かなり多くの健康食品で標榜している効果は、必ずしも正しくはないという事実を認識していただきたいということです。

毎日のように、日中のテレビコマーシャルでは、「こんなに効果があります」と自分の会社の製品を宣伝していますが、その多くははっきりいって眉唾としか思えないということです。

私は機能性食品を研究する一研究者として、このような状況が我慢できないほど、ひどい状況になっていることに強い危惧を感じています。まともに研究し、たゆまぬ努力により機能性食品を発見、開発してきた多くの方々を知っています。

そのような方々により開発された食品と、まやかし食品が同じに評価されてしまっては、私としてはとても我慢ができないのです。この事実を皆さまに分かってほしいものと思い、書かせていただきました。

今井 伸二郎 代謝機能研究所所長

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いまい しんじろう

1984年、東京大学大学院農学系研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。日清製粉株式会社中央研究所勤務。2002年博士(医学)(東京医科歯科大学)。2005年東京農工大学非常勤講師。2010年静岡県立大学客員教授。2014 年東京工科大学教授。著書、監修に『機能性食品学』(コロナ社)、『花粉症等アレルギー疾患予防食品の開発』(シーエムシー出版)がある。

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