「日経平均の最高値更新」は新たな相場の始まりだ 「3万8915円超え」の後はどうすればいいのか

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一方、心配されていた企業業績はどうだろうか。1ドル=150円が定着しそうな予想外の円安ドル高で、2024年3月期の上場企業の純利益は、製造業、非製造業ともに過去最高を更新する見通しだ。それを裏付けるように、16日の日経平均予想EPS(1株当たり利益)は2365円53銭と、4日連続で史上最高値を更新している。

筆者はこの水準なら今の相場を十分信じてついて行くに足る数字だと考えているが、「自分が買ったらなぜか必ず下がる」という投資家の愚痴をよく聞く。

実際、どんな上昇相場でも買ったあとの株はよく下がるものだ。昨年の日経平均においても、前半の約8000円高のあと、半年もの調整期間があった。とくに今回のような大相場では、「株は買ったらしばらく下がるものだ」と開き直った気持ちでないと、相場に乗れない。これは前回も言ったことだが、何度も言わせていただきたい。

もしハイテク株が一服したらどうすればよいか

さて、ここまでは全体観の話をしてきたが、もちろん個人投資家の多くは個別株投資が中心だ。これからどんな株を買うのが有利なのか。

そのヒントは「日経500種平均株価」にある。本指数は東証プライム市場上場の500銘柄を対象に、日経平均と同じ計算方法により日本経済新聞社が算出する株価指数で、1982年1月4日から公表されている。

1989年の平成バブル崩壊、2000年のハイテクバブル崩壊の「ダブルダメージ」を受けた日経平均と違い、ハイテクバブルのダメージが少ないこの指数は、すでに1989年の高値を抜いて久しい。つまり、今回の日経平均の上昇は、半導体中心の「ハイテク株の出遅れ修正運動」にほかならない。したがって、ここでハイテク株の上昇が終わることはないが、さすがに一服感は出よう。

とすれば、その後は調整期間を終えた昨年前半の主力だったメガバンク・ゼネコン・大型鉄鋼株の「主役奪回」が考えられる。しかし、それだけでは面白くない。東証スタンダート市場や、外国人が売り越していた東証グロース市場にも、そろそろ資金が回りそうだ。

もし、日経平均が史上最高値を更新するとしても、2月での史上最高値更新はあまりにスピードが速い。外国人投資家も皆が皆、この恩恵を受けているわけではない。出遅れた外国人が挽回戦に勝つために、出遅れ個別株の世界を選ぶことは十分に考えられるシナリオだ。出遅れ銘柄がまだ3000銘柄もあるといっていい日本市場は、彼らの要求に十分応えることができるだろう。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

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ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

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