ヒット薬が97%減、住友化学子会社が陥った窮地 後継薬の売れ行きも目算狂う、財務は急悪化
住友ファーマの自社開発品であるラツーダは、利益貢献も大きかった。他社から導入した薬のようにライセンス料などを支払う必要がないうえ、製造コストの低い低分子薬だったからだ。粗利益率は9割に近い水準だったとみられる。
稼ぎ頭の特許切れを前に、住友ファーマも手をこまねいていたわけではない。
2012年にはがん領域への参入を目指し、アメリカのボストン・バイオメディカル社を買収した。この会社の開発品の中で、大型薬になると期待したのが、「ナパブカシン」という抗がん薬の候補だった。
ところが目算は大きく狂った。複数のがん種で順調に進んでいたナパブカシンの開発が、2021年までにすべて中止となる事態となった。胃がん、膵がん、結腸直腸がん向けでは、臨床試験(治験)の最終段階である第3相試験で結果がふるわなかった。開発中止に伴い、2021年3月期には269億円の減損損失を計上している。
3200億円投じて手にした基幹薬も不振
ナパブカシンの雲行きが怪しくなっていた2019年、住友ファーマはさらなる賭けに出た。同社史上最大の3200億円を投じ、スイスとイギリスに本社を置く創薬ベンチャー、ロイバント社の子会社であるマイオバント社などを買収。複数の開発品を一挙に取得したのだ。
住友ファーマの野村博社長は当時、取得した前立腺がん薬「オルゴビクス」と過活動膀胱薬の「ジェムテサ」について「(年間売上高が)1000億円に届くポテンシャルを持っている」と語っていた。同じ会社から獲得した子宮筋腫薬「マイフェンブリー」を合わせて「基幹3製品」と呼び、ラツーダの特許切れ後の主要な成長製品と位置づけた。
しかしこれらも、会社の見立てとは大きなズレが生じている。
オルゴビクスの2024年3月期の売り上げ計画は515億円だったが、第3四半期累計実績は309億円と、進捗率は6割どまりだ。ジェムテサは470億円の計画に対し5割、249億円を見込んでいたマイフェンブリーに至っては3割弱の進捗にとどまる。
こうした状況を踏まえ、住友ファーマは第3四半期決算時に3製品の通期売り上げ計画をすべて引き下げた。野村社長は決算会見で、「予想の中に(3製品の)ポテンシャルに対する期待度が過分に入っていた」と反省の弁を述べた。
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