羽田衝突事故、鉄道・バス各社「臨時運転」の舞台裏 運転士手配から関係各所の連絡まで連携プレー

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東海道新幹線を運行したJR東海についても取材した。沿線の最寄りには名古屋、大阪と各所でダイバートを受けた空港が存在する。衝突事故の影響から、名古屋、大阪方面から東京に向かうためには、東海道新幹線を使うのがいちばん早いと考える人も多いだろう。

「弊社として自主的な判断で、臨時列車を設定いたしました」そう答えてくれたのは、JR東海・東京広報室の担当者だ。

「今回はタイミングが合い、緊急時の対応に関して関係各所の担当者が日頃から考えていたことが可能となった」と言う。

急な臨時列車の設定は「ケースバイケースではあるが、担当する乗務員、使用可能な車両やその車両整備、清掃等に必要な社員の体制の確保などを、早急に関係各所と調整し、20時前には、臨時列車の運転を決定した」と話してくれた。

今回の臨時列車(上下各1本)は、定期列車の運行終了後に設定となったわけだが、この理由について、「航空機による旅程を変更されたお客様の受け皿となれるよう、羽田空港や伊丹空港からの移動時間も勘案し、運転時刻を設定した」と話す。また、東京駅と新大阪駅においては、休憩用に列車をホームに停車させ、翌日の始発まで休憩用列車として、開放していた。

さらに、ダイバート当日に運行した臨時2本とは別に、翌日も運行計画とチケット販売状況、列車や乗務員などの手配などを総合的に検討し、4本の臨時列車を運行した。いずれも普通車全車自由席である。

普通車の全席を自由席にした経緯については、「急遽ご移動を新幹線に切り替えられたお客様でもご利用しやすいようにした」とのことだ。

事業者間の垣根を超える

各交通機関にインタビューを行った結果、今回は異例中の異例だということがわかった。しかし、深夜帯の輸送を覚悟し、その後もすぐに対応できたのは、「事業者間の垣根を超えて、旅客輸送の使命を持って行われた」ということにほかならない。

「多くのお褒めの言葉をいただいて恐縮しておりますが、弊社としては、称賛されるようなことをしたとは、思っておりません。非常事態に困っているお客様のお役に立てたらと、関係各所の一人ひとりが動いただけで、実際には、どれだけのお客様のお役に立てたのか……。詳しい数はわかりません。公共交通機関として当たり前のことをしたと思っています」というJR東海の担当者の言葉がとても印象的だった。

日本の交通機関は優秀である。その安全性、定時性からサービスに至るまで、まさに世界のトップレベルであることが今回の件でよくわかった。

渡部 史絵 鉄道ジャーナリスト

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わたなべ・しえ / Shie Watanabe

2006年から活動。月刊誌「鉄道ファン」や「東洋経済オンライン」の連載をはじめ、書籍や新聞・テレビやラジオ等で鉄道の有用性や魅力を発信中。著書は多数あり『鉄道写真 ここで撮ってもいいですか』(オーム社)『鉄道なんでも日本初!』(天夢人)『超! 探求読本 誰も書かなかった東武鉄道』(河出書房新社)『地下鉄の駅はものすごい』(平凡社)『電車の進歩細見』(交通新聞社)『譲渡された鉄道車両』(東京堂出版)ほか。国土交通省・行政や大学、鉄道事業者にて講演活動等も多く行う。

 

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