公認会計士が「監査業務から離れる」根本的な原因 中小型銘柄が「監査難民化」の危険に陥る背景
昨年7月、当時のPwCあらた有限責任監査法人(現PwC Japan有限責任監査法人)が公表した、「次期中期経営ビジョン」は、入社から3~5年の若手が中心となり、10年後の2030年時点の、監査法人としてのありたい姿をまとめたものだった。
財務・会計領域だけでなく、データの信頼性を担保するための業務などの領域への進出を目標として掲げている。たとえば生成AIの信頼性確保に向けた、AIに習熟させるデータの監査。誤ったデータを習熟したAIが、非常に危険なものになることは明らかであり、監査業務で培ったノウハウを活かせる領域として挙げている。
だが、監査ノウハウを活かせる新領域として挙げているものは、どれも非監査業務ばかり。IPO支援も積極的に手掛ける業務の1つに挙げているが、これとIPO監査は同時提供できない。担い手不足が深刻化しているのはIPO監査のほうなのに、だ。これが、社会の役に立ちたい、前向きな若手の公認会計士たちの素直な心境なのだろう。
「会計士が逃げ出さない仕事」にするには
大手監査法人で監査を担当している公認会計士は、4大監査法人から契約更新を拒絶される上場中小型銘柄が監査難民化する問題について、「決算期を変えるだけでかなり解決するはず」だと見る。
3月、12月を避け、さらに3の倍数月を避ければ、3月、12月決算会社の四半期レビューの時期とも重ならない。まして今年4月からは、四半期レビューは第2四半期だけになるのだから、「会計士の手は大幅に空くはず」だという。
ただ、それでは公認会計士が監査を嫌がる現状は変えられない。この会計士は、「会計不祥事があるたびに、金融庁は監査の手順までことこまかに介入してくる。これが監査手続きのチェックリスト化を生み、現場の会計士が疲弊する原因になっている」という。
公認会計士協会は、学生に公認会計士への興味を持ってもらうため、高校、大学を対象に説明会を開催する活動を積極化している。
だが、まずなすべきことは、苦労して難関試験を突破し、公認会計士になった人たちが、監査の現場から逃げ出さないようにすることではないのか。監査の独立性は重要だ。どうすれば独立性を確保したまま、せめて逃げ出さない程度の仕事にできるのか。そろそろ本気で考えなければならない時期に来ているのではないだろうか。
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