経済力と軍事力のどちらがより重要か--ハーバード大学教授 ジョセフ・S・ナイ

冷戦が終わったとき、一部の専門家は、ゲオ・エコノミクス(地経学)がゲオポリテックス(地政学)に取って代わったと声高に主張した。多くの人々は、経済力が世界政治のカギを握ると考え、日本とドイツが支配する世界が訪れると予想した。

今日、一部の人々は、世界の生産高に占める中国のシェアの上昇を世界のパワー・バランスの根本的な変化を示すものと解釈している。

しかし、これは軍事力を考慮しない議論である。彼らは、「経済大国はやがて軍事大国になる」と主張しているが、米国が世界最大の経済大国から軍事超大国になるのに70年かかったことを忘れている。

政治学者は、経済力と軍事力のどちらがより基本的かをめぐって長年議論を行っている。マルクス主義の伝統的な考え方では、経済がパワーの下部構造であり、政治制度は単なる上部構造にすぎない。その仮説は、貿易や金融の相互依存の高まりによって戦争は時代遅れになると信じていた19世紀のリベラル派によっても共有されていた。だが、1914年に英国とドイツは、互いに最も重要な貿易相手国であったにもかかわらず、第一次世界大戦を阻止できなかったのである。

軍事力は力強い経済を必要としている。ただし、経済力と軍事力のいずれが現代のパワーを生み出すかは、文脈次第である。ラバを水辺に連れて行こうとすれば、ニンジンのほうがムチより有効だが、敵からラバを奪い取ろうとするなら、ニンジンよりも銃のほうが役に立つかもしれない。金融安定や気候変動といった問題は軍事力では解決できない。

現在、中国と米国の経済的な相互依存は強まっている。しかし、多くの専門家は、相互依存性がパワー・ポリテックスにとってどのような意味を持っているかを誤解している。

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