「サントリー生ビール」発売1年待たず刷新の本気 変化はわずかだが、一貫した戦略が見える
サントリー生ビールはこれまで家庭用のみだったが、3月からは業務用の販売も開始する。2024年中に取り扱い店舗数を一気に1万5000店まで広げる計画。そこでも意識するのは、若者層を中心とした「新しいものを価値として受け入れる」消費者だ。
業務用の展開で1つの武器として登場するのが、専用ジョッキとして飲食店に導入する「マグジョッキ」。一般的なジョッキに比べ、ずんぐりとした形のマグジョッキは、横幅があり飲み口が広い。口に入れたときの流量が多くなり、より強いのどごしが感じられるという。家庭用で培ってきた「爽快」で「新しい」印象を、業務用でも伝えることを意識している。
製造体制も強化する。サントリー生ビールの製造設備に約10億円を投じ、これまで2工場だった体制を2024年中に4工場に増やす。そうして2024年の販売数量は600万ケースを目標にする。
10円安い価格設定は「ぜんぜんやる」
競合他社からは、これまでサントリー生ビールの販売が順調だったのは、その価格設定にあるとの声も上がる。サントリーは市販における同商品の店頭想定価格を、他のスタンダードビールよりも10円安く設定してきた。
つまり、消費者の支持の背景には安さがあるというわけだ。これに対し多田氏は、「価格設定が消費者にとって魅力となっているのであれば、(これからも)ぜんぜんやる」と言い切る。そしてこの価格設定は、若年層に絞るというマーケティング戦略とも整合性が取れているといえる。
サントリーはこれまで強いスタンダードビールを生み出せてこなかった。2015年発売の「サントリー ザ・モルツ」は、販売数量の落ち込みもあり缶商品の製造を昨年3月に終了。業務用も今年3月から順次終売する。パーフェクトサントリービールは2023年の販売数量目標を350万ケースとしていたが、316万ケースと未達で終わった。
そうした中、サントリー生ビールにとって、今年は文字通り勝負の2年目となる。そして次に見据えるのが、業界で大ヒットの目安とされる1000万ケースの大台突破だ。
ただ、それでも競合商品の背中は遠い。各社の代表的なビールの販売数量を見ると、サッポロビールの「黒ラベル」が1556万ケース、キリンビールの「一番搾り」ブランドが2920万ケース、そしてアサヒビールの「スーパードライ」は7131万ケースに及ぶ(いずれも2023年実績)。
サントリーが若年層へのマーケティングに焦点を当てるのは、強豪ぞろいのスタンダードビール市場において、他社が取り込みきれていない購買層に注力せざるを得ないという事情もある。ビール市場全体を活性化しながら、自社の商品を特徴づけることができるか。ブランド確立に向けた勝負はこれからになる。
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