CoCo壱番屋、海外店舗を一気拡大する期待と不安 日本のカレーハウスのシステムを海外にも移植

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壱番屋が海外展開を強化する背景には、海外の飲食事業の環境が日本よりもよくなっていることがある。

「海外のほうが賃金が上がっており、店舗メニューの値上げを行いやすい。事業環境はいい」。飲食業界のある関係者はこう話す。アジア圏で店舗を運営する別の飲食業関係者も、「日本よりも東南アジアのほうが、価格を高く設定している」と話す。

中国に多くの店舗を持つサイゼリヤは国内の価格を据え置いている一方で、中国では値上げを実施している。値上げをしても、「安価なイタリアンのブランド」という消費者の認知が変わっておらず、客足は好調を維持している。足元では、国内よりもむしろ、中国を含むアジア地域で利益を稼いでいる。

値上げの許容度がある海外への出店を強化

少子化に伴う人口減少により、飲食業の国内市場は縮小していくことが確実視される。その状況下、値上げの許容度がある海外への出店を強化する飲食業者は増えている。

大手居酒屋チェーンを運営する串カツ田中ホールディングスは、2022年6月にアメリカ・オレゴン州ポートランドに店舗をオープン。焼き鳥チェーンの鳥貴族ホールディングスも、2024年中にアメリカへ出店する計画だ。

トリドールホールディングスが運営する、うどん業態の丸亀製麺も海外進出を進めており、すでに海外で244店舗(2023年9月時点)を構えている。

一方で、飲食業の海外展開には難しい側面もある。先述の飲食業関係者は「海外は店舗契約の期間が短い。国によっては3年~5年のところもある(ケースバイケースだが、日本では10年~20年が多いとされる)。契約更新の際に、賃料の上昇を要求されることもよくある」という。別の飲食業関係者も、「海外での出退店は計画通りに進まないことが多い」と嘆く。

賃料が見合わなければ近くの立地に移転して再出店することになるが、引っ越しが頻繁に起こることもあり、既存店舗への設備投資がしにくいという面もある。

壱番屋は今後、現地法人のある地域でもFC契約での展開を進める。その際は店舗契約はFCオーナー企業側にあり、壱番屋本部が負担するものはわずかだ。しかし、日本と同様のペースで出退店が進むとは限らず、計画通りに進まない懸念もある。日本の本部と各国の本部、そしてFCオーナーと連携を密にしていく必要があるだろう。

国内外で店舗拡大に本腰を入れる壱番屋だが、海外での店舗戦略の成否は成長戦略の行方を左右する。海外でもCoCo壱番屋の看板を数多く見る日が来るのか、新中計の進捗を注視したい。

金子 弘樹 東洋経済 記者

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かねこ ひろき / Hiroki Kaneko

横浜市出身で早稲田大学政治経済学部を卒業。2023年4月東洋経済新報社入社。現在は外食業界を担当。食品ロスや排出量取引など環境問題に関心。

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