「中学受験狂騒曲」間違いだらけの中学校・塾選び 過熱の弊害が目立ってきた中学受験の今を追う

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パニックの様相すら呈する中学受験のリアルを追った

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何が何でも中高一貫校――。首都圏では小学校6年生の児童数が大きく減る中、中学校の受験者数が過去最多を更新しそうな勢いだ。なぜなのか。
『週刊東洋経済』2月3日号の第1特集は「過熱! 中学受験狂騒曲」。パニックの様相すら呈する中受のリアルを追う。

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『週刊東洋経済 2024年2/3特大号(中学受験狂騒曲)[雑誌]』(東洋経済新報社)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。定期購読の申し込みはこちら

ヒマリ(仮名)は小さい頃から本が大好きだった。推理小説『シャーロック・ホームズ』シリーズを読破。家にある図鑑も片っ端から読み込んでいる。だから国語はずっと得意だし、理科は模試で1位になったこともある。

小2から通っていた大手塾をやめ、小3の9月から別の大手に転塾。帰ってくるなりヒマリは「授業が楽しい!」と目を輝かせた。

「明るい雰囲気の中学がいい」。ヒマリは女子御三家(桜蔭・女子学院・雙葉)の1つと白百合学園、慶応義塾中等部を自ら選び受験した。結果はすべて合格。ヒマリは自分と同じ夢を持つ同級生が多そうな学校を選んで進学した。今は中学が楽しくて仕方がない。

すべてに前向き、好奇心の塊のヒマリにとって、受験は楽しいものだった。ママにも大変だったという思いはない。

ただ、子どもが自主的に取り組み、親の手もかからないヒマリのようなケースは実に珍しい。

「サポートはママの仕事」

百合子(仮名)は息子が大手塾に入る際、塾に「サポートはママの仕事」と言われた。始めてみたらそのとおりだった。

「今日はここからここまで」。百合子がホワイトボードに書いて、息子が解いていく。わからないところは息子と一緒に解説を読んで考える。塾からもらってくるプリントが多すぎて、こなし切れる日はめったにない。

「まるで副業を始めたかのような忙しさだ」(百合子)。小6になると算数が難しすぎて親子とも塾についていけない。そこで大手塾に通い続けながら、現役東大生の家庭教師をつけた。

息子は御三家(開成、麻布、武蔵)の1つに入学。部活を頑張る一方、東大進学に特化した塾に通っている。入学して間もなく百合子は昇進。夜の会食や出張が増えた。「たまたま内勤主体、在宅勤務OKだったからできたこと。現在のポジションで息子のサポートは無理」と百合子は漏らす。

鉄郎(仮名)の妻は受験が終わった後に、寝ている息子を踏みつけるなど暴力を振るうように。皿は投げつけるわ、朝食のおかずはのり1枚なんてザラ。合格したのに息子が妻の母校へ進学しなかった。それが気に食わない。「これはいかん」と鉄郎は妻と離婚した。

以上はすべて実話だ。家族を疲弊させ、揚げ句の果てには破壊する中学受験とは何なのか。過熱する中学受験の今を追った。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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