治療1回に水120L必要「透析患者」襲う断水の怖さ 「水は電気とともに医療機関の生命線」と関係者

拡大
縮小

先にも述べたが、腎不全による腎代替療法には、血液透析と腹膜透析のほかに、腎移植もある。移植がうまくいけば、免疫抑制剤を飲む以外は普通の人と同じような生活が送れるようになるのだが、こちらも厳しい現状がある。

日本臓器移植ネットワークによると、2023年の腎臓移植希望者数(登録者数)は1万4330人であるのに対し、提供数は131、移植数は248にとどまる。移植は血液型や白血球型の適合、登録期間などが点数化されてポイントが高い人から選ばれるため、順番がなかなか回ってこず、20年近く待機している人もいる。

移植では、親や子、兄弟などから腎臓提供を受ける生体間移植もあるが、ドナー(腎臓提供者)は健康な体を傷つけ、腎臓を提供するため、慎重な決断が必要である。

ドナーは、意思表示をしっかりできる、自発的に腎臓の提供を申し出ているかなどの倫理的な条件や、ドナーの腎臓の働きが良好で、腎臓がレシピエント(受腎者)に移植後にも適切に働くといった医学的条件を満たす必要があり、ハードルは決して低くない。

生活習慣病が透析導入の主な原因

そもそも、透析とはどんな治療なのか。

最新データでは、透析のきっかけの第1位は糖尿病性腎症(38.7%)、次が腎硬化症(18.7%)だ。

糖尿病性腎症とは、糖尿病で起こる高血糖が腎臓の血管にダメージを与えた状態、腎硬化症とは、高血圧が原因で腎臓の血管が動脈硬化を起こした状態をいう。

透析になるきっかけの第3位は、慢性糸球体腎炎(14.0%)だ。

糸球体とは、腎臓にある微細な動脈の塊で、そこで血液が濾過され、不要なものは尿となって膀胱に送られる。糸球体腎炎とは感染症や自己免疫疾患などで、糸球体が壊される病気だ。健診で尿の異常(タンパク尿や血尿)で見つかるケースが多い。

透析では高齢化も問題となっている。2000年の平均年齢は61.19歳だったが、年々上昇傾向を示し、2022年末は69.87歳だった。

透析になるきっかけ
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT