米大統領選挙は「4年に一度の革命」に他ならない トランプ復活はアメリカ新内戦の引き金になる

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アイオワ州は1972年から、民主党の指名候補争いの口火を切る最初の州として名乗りをあげ、それが2020年まで続いてきた。最初とあれば、その後夏まで全土で続く予備選挙の結果を占うことになると、候補者や民主党は前年からアイオワ州に巨額の資金を投入してきた。

アイオワ州は実は4年ごとの大統領選の年、アメリカの民主主義の公正さと誇りを示す出発の地でもあった。そこがトランプ「被告」を選出した。

ところが今年は、バイデン大統領と民主党が、同州で党員集会を行わないと発表した。民主党予備選挙のスタートは、南部サウスカロライナ州で2月3日となった。アイオワ州は白人の有権者が圧倒的に多く、民主党を支持する多様な人種の意向が反映されないためだ。

トランプ復活で危惧される「新内戦」

「4年に一度、待っているんだ。この時を」

と高級レストランのバーテンダーが、満席のフロアを見渡しながら遠い目をした。

「民主党の大統領候補者、有名人、メディアがみんな来て、僕らの話を聞いてくれる」

2008年1月、雪深い中西部アイオワ州デモイン。オバマ元大統領が同州党員集会で、大方の予想を覆しヒラリー・クリントン元国務長官を破る「奇跡の勝利」を収めたとき、取材で現場にいた。

タクシー運転手も「民主党の論客を乗せたんだ。誇らしかったよ。重要なイベントだからね」と話した。同州の市民は党員集会で、公正な大統領選挙の口火を切ることに誇りを持っていた。

しかし、アイオワ州に今、誇りも自信もあるのだろうか。トランプ氏が指名候補になれば、民主党地盤の州を攻撃し、選挙を有利に運ぶようにあらゆる工作をするかもしれない。民主党支持者は、どこかで攻撃されずに、あるいはリベラル・保守がぶつかり合うデモに巻き込まれずに集会や投票所に行かれるのか不安になるだろう。火の手こそ見えないが激しい対立が、独立戦争、南北戦争のような「内戦」状態になることも予想される。

有権者に覆い被さる不信と不安が渦巻く中、大統領選挙の公式日程が始まった。

津山 恵子 ジャーナリスト

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つやま けいこ / Keiko Tsuyma

東京生まれ。共同通信社経済部記者として、通信、ハイテク、メディア業界を中心に取材。2003年、ビジネスニュース特派員として、ニューヨーク勤務。 06年、ニューヨークを拠点にフリーランスに転向。08年米大統領選挙で、オバマ大統領候補を予備選挙から大統領就任まで取材し、『AERA』に執筆した。米国の経済、政治について『AERA』ほか、「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」「HEAPS」に執筆。著書に『モバイルシフト 「スマホ×ソーシャル」ビジネス新戦略』(アスキーメディアワークス)など。X(旧ツイッター)はこちら

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