【英国】
保守党政権が14年近く続いてきた英国では、ブレア、ブラウン両元首相以来となる労働党政権の誕生が有力視されている。世論調査では、キア・スターマー党首率いる労働党が保守党を大きくリードしている。保守党はジョンソン元首相が見舞われたスキャンダル、後任のトラス前首相が招いた市場の混乱、そして欧州連合(EU)離脱によるプラス効果を約束したにもかかわらず、生活水準も低迷している経済が足かせとなり、立ち直ることができていない。
労働党が勝利すれば、産業戦略やエネルギー政策など分野への政府の関与は強まり、大幅な転換を遂げる可能性が高い。また、労働党は税の抜け穴を塞ぐとともに、労働者の権利を強化し、再加盟することなくEUとの緊密な関係を築くことを公約しているが、その計画の多くは曖昧なままだ。
スターマー氏は政権に復帰すれば政府支出を厳しく管理すると約束しているが、貧弱な公共サービスの改善に向けて増税は必要になるかもしれない。しかし、保守党は所得税減税の見通しをますます強めており、労働党による財政再建の作業は難しくなるかもしれない。
選挙結果の潜在的影響
いずれの政党も過半数に届かず、政府が政策課題を実現できない「ハングパーラメント」となる可能性は拭えない。スターマー党首の個人的評価は比較的弱く、世論調査会社に態度未定と答えた人々は右寄りへと傾きつつあるようだ。ノムラ・インターナショナルの欧州担当チーフエコノミスト、ジョージ・バックリー氏は明確な勝利政党が現れなければ、市場にはサプライズで、ポンドに打撃となるだろうと指摘。「先行き不透明感は企業の投資意欲を減退させ、経済にとってマイナスになる」と述べた。