【インド】
この10年、世界最大の民主主義国家インド政治の中心にとどまり続けてきたモディ首相の人気に衰える兆しはない。野党の足並みが乱れる中、力強い経済成長を主導し、製造業とテクノロジーの拠点、そして中国に代わる安全な選択肢としてインドの世界的地位を築いたモディ氏の3期目続投が有力視されている。
モディ首相は中国に対抗して新たな関係を築こうとする米政府の取り組みによる恩恵を受ける。米国はマイノリティーに対する差別拡大やインドの歴史を利用しようとするモディ氏の試みには目をつぶる姿勢だ。
与党インド人民党(BJP)は最近の州議会選でも勝利しており、モディ首相がさらに5年政権を担う方向にあることを示唆している。しかし、カナダでの政治的殺害を巡る疑惑に加え、米国でも暗殺が試みられていた疑いもあり、インド政府に対する疑問は広がっている。モディ氏3期目で民主主義が後退するような事例が増えた場合、落ち着かない状況に一段と陥ることもあり得る。
選挙結果の潜在的影響
家計債務の増加と貯蓄減少がインドの成長を脅かし、モディ首相の見通しを損ねる恐れがある。クレジットカードを使った支出や負債が記録的な水準に増加し、インド準備銀行は昨年11月に無担保融資の一部で対策に乗り出した。インド経済は厚めの国内貯蓄をてこに新たな投資を進めてきたが、政府や民間セクターが使える貯蓄余地は縮小しており、世界最大の人口を擁するインド経済の急速な成長には疑問符が付くかもしれない。