生成AI時代に注目される「古代ギリシャの美徳」 リスクを避けAIを正しく使う「人類の英知」

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全米経済研究所の研究レポートによると、カスタマーサポートのオペレーター向けに会話支援型の生成AIを導入して効果を検証したところ、非熟練者はAIによる提案に従って行動に取り入れることで、応対品質が向上する可能性が高く、AIの支援によって非熟練者が熟練者のようにコミュニケーションするようになるという示唆的な証拠を得ることができたとしている。

一方、熟練者の場合、自身の行動に内在する潜在的な暗黙知を生成AIが捉えているので、影響は少ないとしている。したがって、過度に恐れず「勇気」をもって活用に踏み出すべきである。

そして、何か倫理的な問題に気づいたら声を上げる「勇気」も必要だ。技術を正しく使い、よりよい社会を実現していくためには、多くの人の協力が不可欠である。企業や組織側もそういった声に真摯に耳を傾け、問題がある場合には誠意をもって対応する姿勢が求められているため、躊躇なく声を上げ、利用者自身も問題が解決されない場合には利用中止を決定できる「勇気」が必要だ。

節制(Temperance)/正義(Justice)

3つ目の徳は節制(Temperance)である。プラトンは拙速な判断を戒め、思慮深さをもたらすものとしてこれを最も重要な徳目だと述べている。

生成AIの凄さを目の当たりにすると、個人的な願望や純粋な知的好奇心、効果などに目がくらんで判断が鈍りやすい。生成AIを利用する時には、常に自分自身の偏見と限界を認識し、透明性・公平性を鑑みながら生成結果がもたらす影響は何かを考え、使う/使わないかを判断する慎みを持たなければならないのだ。

そして最後の徳目が正義(Justice)である。公平さと道徳心を含むもので、生成AIの利用によって差別や偏見を助長することがないよう意識し、最善の方法を探求し続けなければならない。こうした一人ひとりの取り組みがよりよい社会の実現につながるのである。生成AIという「利器」を決して「凶器」にしてはならない。一人ひとりの正義感が、今まさに求められている。

古代ギリシャの哲学者たちが唱えた美徳は、生成AIの時代においてもなお有効であり、不変である。生成AIの利用者が「思慮」「勇気」「節制」「正義」をもってさまざまなリスクを乗り越え、正しい道に進むことを願ってやまない。

保科 学世 アクセンチュア株式会社 執行役員 データ&AIグループ日本統括

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ほしな がくせ / Gakuse Hoshina

アクセンチュア株式会社 執行役員 データ&AIグループ日本統括
アクセンチュアにてAI・アナリティクス部門の日本統括、デジタル変革の知見や技術を結集した拠点「アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京」の共同統括を務める。AI HUB プラットフォームや「AIPOWERED サービス」などの開発を統括すると共に、アナリティクスやAI 技術を活用した業務改革を数多く実現。著書・監修書多数。厚生労働省保健医療分野AI 開発加速コンソーシアム構成員など歴任。一般社団法人サーキュラーエコノミー推進機構理事。

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