シリコンバレー、他国がまねても失敗する根本理由 表面だけを見ていてはわからない深い背景

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この自由は予想外の影響をもたらした。メインフレーム時代以来、国の政治家たちはこの技術を漠然としか理解しておらず、ホッケースティック状の急成長が国内経済を促進するというだけで、その産業のデータ収集活動の規制を驚くほど軽くすませた。

政府の作ったインターネットが1990年代初頭についに商業活動に開かれたとき、民主党と共和党の政治家はどちらも、規制は最小限に抑えるべきだと合意して、利用者のプライバシーといった話になると、企業がおおむね自己統制するだけですませた。こうしたものすべては最終的に、ソーシャルメディアなどのプラットフォームにおける、コンテンツと接続性の見事な爆発を許容した。

だがインターネットのルールを設計する人々は、悪いアクターたちがこの仕組みを濫用する手口について認識していなかった――そしてこれらのツールを設計する人々は、自分の創り出したものがいかに強力で、どれほど濫用可能になるかについては、ほとんど認識できていなかった。

賢い人だらけだったが、ほとんどは他所からきていた

一見するとお馴染みの物語に、もう1つひねりが入る。

ハイテク革命は、個人の才能だけでなく、集合的な努力の結果でもあり、多くの技術関係者以外の人々も重要な役割を果たした。成功が生まれたのは、何千人もの活気ある多様なキャストのおかげで、ベストセラー伝記やハリウッド映画のネタになった、スポットライトのあたる役者たちだけではない。すばらしいエンジニアもいた。見事なマーケティング担当者、弁護士、オペレーター、金融屋もいた。多くは金持ちになった。

だがならなかった人はもっと多い。政治と金融の権力からはるかに遠い、快適で怠惰な北カリフォルニアで活動していた人々は、起業家のガラパゴスを作りだした。そこには新種の会社が生まれ、独特な企業文化の流派も生じ、ある程度のヘンテコさに対する寛容も見られた。

そこは賢い人だらけだったが、ほとんどは他所からきていた――アメリカの反対側の端、地球の裏側などだ。そしてお馴染みのものをふりすてて、未知のものに飛び込む意欲を持っていた。ある古参のハイテク業界人が夢見るように語ってくれたように「負け犬どもがみんなしてここにきたんだ。そして奇跡的にそいつらが成功した」。

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