JR各社の「保守革命」、作業ロボット開発の現在地 人型ロボは実用化目前、リニア新幹線向けも

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ロボットを載せた大型トラックをトンネル内に据え付けると、ロボットアームが動き出し、レーザー測量機を使ってトンネル内壁と装置の位置関係や壁面の状態を自動計測する。続いて、アームが接触式の検査装置を壁面に押し付け、打撃を加え、振動を直接取得してコンクリートの内部の状態を評価する。

JR東海のロボット
JR東海が開発したトンネル内検査ロボット(記者撮影)

「機械がこのような作業を連続して行うのは日本初だろう」とJR東海総合技術本部技術開発部土木構造物技術チームの吉田幸司チームマネージャーが話す。打音検査だけではない。目視検査についても「撮影した画像からひび割れの判断は技術的にできると考えられるので、今後検討していく」とする。

JR東海 ロボットアーム
JR東海が開発したロボットのアーム先端には接触式の検査装置が付いている(記者撮影)

具体的な運用は今後決めるが、省力化の効果としては、従来5人1組で行っている作業が、3人1組ですむようになるという。作業時間の短縮については「現場では人がやる場合に10~15分かかっていた作業が10分程度ですむ」という程度。しかし、現在のやり方では現場作業後に人がデータを持ち帰って整理する作業があったが、機械化により自動で計測できるため、「トータルでの作業時間にはより効果がある」(吉田氏)。

メリットは省力化だけではない。目視や打音での検査は検査員の経験に基づく技量も求められ、一人前になるまでには3~5年の実務経験が必要という。しかし、このロボットを使えば、熟練した検査員でも検出が不可能な微細な欠陥の検出が可能であり、検査の精度が高まるという。「検査の安全性、効率性が高まるほか、検査員の経験に依存せず正確かつ均質な検査を行うことができる」と吉田氏が自信を示す。

リニア新幹線での導入目指す

今回のトンネル検査ロボットはリニア中央新幹線での導入を目指している。リニアは大半がトンネル区間となるだけに、このロボットが導入されればメンテナンスにかかわる人手をぐっと減らすことができる。

とはいえ、リニア開業を待っていると、このロボットが実際に稼働するのは2027年以降ということになる。そこで、「東海道新幹線や在来線への導入も検討していきたい」と吉田氏は話す。

新幹線や在来線では上部に張り巡らされた架線がロボットアームの支障になるという課題があるが、それを解決できればこのロボットの用途は大きく広がる。JR東海はその日に備えてさらなる開発を続けている。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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