レシピ考案から合コンまで!進化するAI 奇想天外だけど意外といい
おそるおそる食べてみる。と、これが意外にまずくない! というか、DASHIやのりの風味と、ほろ苦いチョコの奇想天外なマリアージュが、何ならうまいんですけど。一方、困ったことも。レシピはアメリカ流の「7人前」。黒い物体が、鍋にたっぷり残ってる。
「(このレシピは)ワトソンによって発見され、あなたによって作られた」
というコピーから察するに、常識にとらわれないレシピで人間の創造力を刺激するのがこのシェフの真の使命なんだろう。チャレンジ精神を刺激され、僭越ながら残った鍋にカレー粉をインしてみた。ところが……カレーの刺激でマリアージュは消滅、そこらのカレーに。シェフワトソン、恐れ入りました。
言いそうな答えを生成
続いて交流させてもらったのは、今をときめくメディアアーティストの真鍋大度さんが作っているAIだ。海外アーティストのPVや、アイドルグループPerfumeのライブ演出における技術開発など、プログラミングスキルを持った気鋭のメディアアーティストとして注目されている。
その真鍋さんがここ数年取り組んでいるのが、AIを使った実験的なアートだ。たとえば、「プロフェッショナルとは」という問いに対する、真鍋さんの答えを生成するAI。昨年、出演したNHKの番組「プロフェッショナル」のために作ったもので、いまもネット上で公開されている。
サイトの「生成」ボタンを押すと「美術館に映画を置く人かもしれません」だの、「実践ではなく、明らかをちょっと求める人でしょうか」だの、毎回違う答えが画面に出現。何だか不思議な、でもシュールレアリスムの詩人の名言だと言われれば、ああそうですかと信じかねないような言葉は、コンピューターが“考えて”作っている。真鍋さん本人が8年間書きためていたブログやインタビュー記事、ほかのプロフェッショナルな人々の名言などをコンピューターに解析させ、本人が言いそうな答えを生成するのだそうだ。
本誌の記事でラップ
ラップを作るAI作品もある。すでにあるラップの歌詞や、ツイッターのつぶやきなどをAIに学習させ、音の近いフレーズを瞬時に選んで韻を踏ませる。たとえば、「Computer animation」と「Caught up in emotion」。それぞれの単語の発音は似ていないが、続けて言ってみるとなるほど、かなり音が近い。ラップのリズムに乗せやすいよう、こうした似た音のフレーズを探してくる。
ツイッターが広まったおかげで、最近はリアルタイムのつぶやきも学習できる。たとえばみんなが「アップルウォッチ」とつぶやけば、ラップ生成AIは、「アップルウォッチ」という言葉が入ったラップのフレーズを作る。1秒前にみんなが思ったことを即座にリズムに乗せる。そんな究極のコンテンポラリーといえる表現も可能になった。
考えてみれば、世の中の旬の話題を取り上げ、過去の記憶から言葉を探して表現するのは、ライターの仕事と同じ。しかもこっちの記憶の容量は、コンピューターと比べるとありんこほどにもならない。失業する日は遠くないのかも。ところで真鍋さんはなんで、アートにAIを使おうと思ったんですか?
「お客さんが次に何を買うかなど、消費者の動向を探るために、ビジネスでAIを活用する例が多い。でも表現の世界なら、AIはこんなこともできるんだということを見てもらいたいから、かな」