グーグルは創造者か、それとも破壊者なのか 全産業支配の野望と立ちはだかる国家の壁

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04年の上場来毎年IRサイトで公開されている「Founders’ Letter(株主への手紙)」。6月3日に公開された最新版に、欧州委からの異議告知書の件は全く触れられていない

日本でもAI技術を核にあらゆる産業に手を伸ばすグーグルに対し、政府は警戒感を持っている。

「事実上、検索ではグーグルがパーソナルデータを独占するという事態に陥っている」と語るのは、民主党の大久保勉参議院議員だ。東京大学先端科学技術研究センターの玉井克哉教授は「グーグルが集めたパーソナルデータは、世界でほかにないデータベースになっている。検索を会社分割して平等に利用させるべき」と当局に対し、踏み込んだ対応を提案する。

プライバシーの問題も頭をもたげる。2014年5月に欧州司法裁判所はいわゆる「忘れられる権利(個人の過去や、無関係となった内容に関するネット上の記載を削除するよう請求できる権利)」を認める先行判決を下した。この問題は日本にも飛び火しており、今後削除要請の数は膨らんでいく見通しだ。

「Don’t be evil(邪悪になるな)」の誓い

グーグルは毎年、株主総会の後にIRサイトで「Founders’ Letters」と題する株主への手紙を公開している(今年の株主総会は現地時間6月3日に実施)。その中で2011年4月におよそ10年ぶりにCEOへ復帰した、もう1人の共同創設者ラリー・ペイジ氏(42)は、欧州との対立などには全く触れることはなく末尾でこう述べている。

「たった20年近くでテクノロジーは人々を健康に、また幸せにした。信じられないほど情熱的な社員とともに、今後も私は謙虚かつ興奮して挑戦していきたい」(”just like when we started nearly two decades ago, it is possible to create the technology that allows people to lead healthier, happier lives. And, along with our incredibly passionate employees, I am humbled and excited to try.”)

「グーグルは普通の会社ではない(”Google is not a conventional company.”)」と宣言した2004年8月の株式公開から10年余り。確かに1996年に米スタンフォード大で無邪気に検索エンジンを開発した当時の若者二人は、型にはまらない姿勢でここまでたどり着いた。が、今後は社会とどう折り合いを付けていくのか、自ら説明していく必要も増えていくだろう。「”Don’t be evil”(邪悪になるな)」。同じく社是に掲げたこの誓いに、彼らがどれだけ忠実にいられるのか。今まさに、世界中の視線が注がれている。

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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