「長期投資の肝!」時代のど真ん中産業の見極め方 ターゲット業界を間違えれば成果は出ない
たとえば、金融は資金調達という点でどの業種にも関わってきますし、商社は材料調達で多くの業種に関わります。横断的知識ではなく、実態に即した産業構造は、企業の事業活動を価値創造のための一連の流れとしてとらえる「バリューチェーン」という考え方をするとわかりやすくなります。
産業のバリューチェーンの考え方を知ろう
この考え方を提唱したのはアメリカの経済学者マイケル・ポーター氏で、「バリュー=価値」「チェーン=連鎖」であるところから、日本語では「価値連鎖」と訳されます。企業の事業活動は、原材料の調達から製造、流通、販売、さらにはアフターサービスまで多岐にわたります。
それぞれの事業活動がさまざまな役割を担い、価値を創出しているわけですが、こうして生み出された付加価値は、個々の事業活動が生み出した価値を単純に足し算したものではありません。それぞれが複雑に絡み合って生み出された連鎖(=チェーン)による価値(=バリュー)というのが、バリューチェーンの考え方です。
次の「産業の構造(バリューチェーン)のイメージ図」を参照してください。まず、原材料を原産国から輸入したものが素材メーカーに流れていきます。そこではたとえば鉄板や鉄骨になったり、化学製品を作るための基礎製品になったりします。これらが部品メーカーや、製品製造のための機械製造、もしくは加工・組み立てを担う工場に流れていき、小売を通じて消費者に届けられます。
日本の場合、これらの過程のほぼすべてに卸売が入っており、この図はそこまでの一連の流れに卸売や物流、そして金融が関わっているということを示しています。これがバリューチェーンの考え方です。
消費者のところに来る前の段階まではすべてBtoB(企業間取引)なので、私たちの目には見えていませんが、こうした構造になっています。日本では、BtoBの間には専門商社と呼ばれる商社があり、ほぼすべての工程に関わってきます。これらすべてをお金の面から支えているインフラが、金融というわけです。
どの業種・どの会社もお金を調達したり借りたりしなければなりませんし、資金調達のために株を発行したりすることもあるでしょう。保険をかけて損害に備える必要もあります。またリース会社から機械を借りるなど、あらゆるところに金融が関わってきます。
さらに、大枠として社会インフラというのもあります。陸運での流通には道路が必要ですし、道路には信号がつきものです。もっと基本的なことでいえば、通信が使えないとビジネスが成立しません。電気がなければ回っていかないという現実があります。建設や通信、電気、ガスに始まり、警察、役所などの公共インフラも日本の産業を支えているのです。