一流の「ビール売り子」が体現する商売の鉄則 AKB総選挙に通じるファンとの関係

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常連客側の視点に立ってみよう。男性が多いのであえて「彼ら」と書く。彼らはどんな売り子から「買いたい」と思っているのか。球場によく足を運ぶ複数のファンに聞いてみた。共通するのは、以下のような言葉だ。

「一生懸命やっているから、なんだか応援したくなる」

「重いビールサーバーを背負って頑張っている姿を見ると、買ってあげようかと思う」

売り子の姿、姿勢、頑張りに共感しているというのだ。さらに突っ込んで聞いてみると、思いがけないことがわかった。

「売り子さんの腕章などには、よく見ると売り上げランキングの順位が書いている。その数字を見て、お気に入りの売り子さんにもっと上位へ行ってほしいと、つい手助けしたくなる」

なるほど、これはもう応援団。AKB総選挙で「推しメン」に投票するファンと同じ心理状態といえる。

売り子とファンの関係

売り子とファンの間の心理を整理してみた。

売り子:まずは、過酷な現場で、必死に頑張る、先輩のやり方をマネしてやってみる
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ファン:一生懸命な姿や、気を遣って頑張っているところを見て、応援してみようと買う
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売り子:成果が出た、応援してもらえた、もっと頑張ろう! と思って工夫する
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ファン:前より何気ない会話ができたり、タイミングよく席に行けるようになったりして、お客は自分を理解・共感してくれる売り子さんと感じて喜んで買う
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売り子:仕事が楽しくなってくる、それが刺激となり意欲的になる
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ファン:いきいき仕事をしている姿にさらに共鳴して、さらに応援したくなる
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売り子:販売技術も効率的な動き方も段々熟練してくることによって、常連客に応援される
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ファン:周囲のお客様も共感・共鳴して買ったり、お客を紹介したりする
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売り子:ランキングが上がって、さらに頑張ろうと思う

 

このように階段を登っていくのだそうだ。

これは、何だろう。

このような心理は「水商売だから」と感じる読者もいるかもしれない。ただ、これは他の業種・職種でも同じようなことはある。アパレル販売、宝飾品販売、飲食店、保険外交員、カーセールスなどなど。これらの業種でも「あなたから買いたい」「あなたのお店を応援しているよ」という思いが働いて購買していることはないだろうか。

商品だけで選ばないとしたら、「あの人だから」「あの店だから」と買っているのだ。よくよく考えてみると、「あなたから買いたい」という思わせることはモノが売れない時代に、欠かせない。お客が応援しながら、ビール売り子を育てている。逆に言えば、それは、「常連客に育ててもらっている」ことであり、いかなる商売にも共通する鉄則ともいえる。
 

原 佳弘 人材育成プロデューサー/組織発酵学

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はら よしひろ / Hara Yoshihiro

Brew株式会社 代表取締役。組織発酵学®プロデューサー。1973年生まれ。横浜市立大学卒業。(旧)建設省所管の市場調査機関にて経営企画を担当後、人材育成やマーケティングのコンサルティングの会社へ。大手企業の新商品開発から精鋭営業チームの育成プロジェクトなどに携わる。2014年、Brew(株)設立。専門分野を持った350人以上の講師コンサルタントとパートナーを組み、組織開発やイノベーション人材育成サービスを提供している。著書に「研修・セミナー講師が企業・研修会社から選ばれる力(同文館出版)」がある。

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