現金で即買いも「中国人」が狙う東京の億ション 資金を国外に逃避させる人たちが買っている
不動産も選択肢の1つだ。中国人は300万ドル(約4億4000万円)以上する東京のマンションの主要な購入者となっており、東京のオンライン不動産物件情報サービス会社「神居秒算」のCEO(最高経営責任者)ジャオ・ジエによると、スーツケースに入れた現金で支払いを行う中国人も多い。「この手の現金を数えるのは本当に骨が折れる」とジャオは話した。
ジャオの話では、パンデミック以前の中国人購入者は、東京のワンルームマンションを33万ドル以下で購入し、賃貸に出すのが普通だったが、今ではもっと広い部屋を購入し、投資ビザを取得して家族を移住させるようになっている。
全体として今年は、主に中国の一般家庭や民間企業によって月に500億ドルが国外に持ち出されていると推計されている。
資金流出による通貨安で輸出は好調
このペースでの資金流出は、17兆ドル規模の中国経済に差し迫ったリスクをもたらすものではないだろうと専門家は話す。その主な理由は、同国の主要な工業製品の多くは輸出が堅調で、中国に安定して現金が再流入しているからだ。
とはいえ、一般家庭が貯蓄を国外へ移す動きがさらに広がれば、警戒が必要になるかもしれない。国外への大規模な資金流出は、過去数十年にわたりラテンアメリカや東南アジアで金融危機の引き金となってきた。当の中国も、2015年から2016年にかけて人民元ショックに見舞われている。
今のところ、中国政府は状況をコントロールできているとの考えを示している。中国からの資金流出は、対ドルなどで人民元相場の下落を招いているが、人民元安は中国の輸出と雇用を支える助けとなっている。
現在の中国からの資金流出は「極めて制御可能なものだ」と、ハンセン銀行上海事務所の中国担当チーフエコノミスト、王丹は言う。
8年前に起きた中国からの資金流出の急増は、株式市場の暴落と、通貨切り下げのコントロールに失敗したことが原因だった。中国の中央銀行は当時、人民元を買い支えるために、月間1000億ドルもの外貨準備を使わなければならなかった。