札幌の「ヤジ排除問題」報じ続けるメディアの信念 映画手がけたHBCの山﨑裕侍監督に話を聞いた

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――その中でメディアが果たす役割は、どうあるべきだとお思いですか?

今はいろんな困っている人や、社会の不条理に直面している人たちがいると思うんです。そういう人たちの声を伝えていくのがメディアの役割のひとつだと思うんですね。困っている人たちの声を伝えることで、彼らの暮らしがよくなるのなら、ほかの困っている人たちの暮らしもよくなる。

いちばん大変な人の基準に合わせると、結果的に多くの人が生きやすい社会になるんですよね。

これは障害者運動のカーブカット効果と言われていますが、つまり障害がある人が過ごしやすい社会というのは、健常者にとっても過ごしやすい社会になるんですよね。段差がなくなるとか、みんなが助けてくれるとか。メディアはそういう社会にするための、小さな声の拡声器であるべきだと思いますね。

映画を観て共感する女性が多い

――あらためて今回、「ヤジと民主主義 劇場拡大版」が映画になった思いをお聞かせください。

表現の自由をテーマにした映画ですが、事前の試写では、観る人にとって面白いと感じるシーンや共感ポイントが違うだけでなく、怒りが湧いたという人もいれば、涙が出たと語る人もいます。札幌では笑いもたくさん起きました。

みんな映画を観た後、饒舌になるのが不思議です。そして「排除されたのは私たちだ」と共感する女性が多いです。セクハラの被害にあったり、会社や家庭で「女は黙っていろ」と言いたいことを封じられた悔しさや差別を味わった自分に重ね合わせているのだと思います。テレビのように「わかりやすさ」ではなく、複雑で多様な人の生き方や思いを映画に盛り込めた結果であれば嬉しいです。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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