札幌の「ヤジ排除問題」報じ続けるメディアの信念 映画手がけたHBCの山﨑裕侍監督に話を聞いた

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――それが1つめの後悔ということですね。

2つめの後悔は、僕自身が会場にいたということですね。僕は以前、政治担当の記者をしていたものですから。藤沢澄雄さんという自民党の道議会議員と選挙情勢などの意見を交わしていたんですが、一瞬、ヤジが飛んだのが聞こえたんです。

けれどもすぐ聞こえなくなったので、終わったなと思ったんですが、あんな形で排除されていたというのは映像を見るまでわからなかった。

だけどその場所にいて何もしなかった、黙認していたという意味では僕もその1人であるから、メディアというよりは、そういう沈黙した民衆の1人という立場に自分がなってしまったという後ろめたさもありました。

第一報を報道できなかった悔しさ

――そして3つめの後悔とは?

やはり第一報を報道できなかったということですね。

朝日新聞が報じるまで知らなかったですし、しかも何番手も遅れた後に報じているんです。

ただ第一報を報じるというのは本当に難しくて。特に警察が発表した情報ではなく、警察のやっていることを批判する内容ですから。

朝日新聞でもいろいろ議論はあったらしいんですけども、自分たちでも第一報が打てたかというと、それは胸を張って言えないところがあって。報道しようとする思いがあっても社内で止められた可能性もありますよね。

そういう意味でも第一報を報じられなかったという後悔がありました。後悔があった分、追いつかなくてはという思いで続報を出し続けたのですが、気がついたら誰もが途中で走るのをやめていて。自分たちだけが走り続けていたという感じですね。

ヤジと民主主義
 「ヤジと民主主義」を手掛けたHBCの山﨑裕侍監督 (写真:筆者撮影)

――山﨑さんはニュースを統括する上司の立場ですが、部下の記者さんたちにどういう態度で接するのがいい上司だと考えていますか?

南極の第1次越冬隊の西堀榮三郎隊長が言った言葉で「とにかくやってみなはれ」と。やる前からつべこべ言うやつはつまらないやつだと。失敗してもいいからやってみなよと言ってくれるのはいい上司だと思いますね。何か理由をつけてやらないのはつまらないことだと思います。

もちろん誤報を出すとか、誰かの人権を傷つけるというのはよくない失敗ですが、リカバリーできる失敗はしていいし、逆に失敗しても次にいいものを出せればいい。だからやりたいことを応援してくれるのが一番いい上司だと思いますね。

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