ブラジル石油の汚職、日本企業に損失飛び火 現地は終結宣言したが、長期展望に暗雲も

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だが、政治的には決着したとしても、ブラジルの海洋開発投資の長期的な展望は、大きく狂っている。

4月22日にペトロブラスが開示した2014年度決算では、汚職関連費用として約2500億円の損失を計上。さらに2014年後半からの原油価格の急落や製油所建設の計画延期で、約1.8兆円もの減損を処理。負債総額は約14兆円まで膨らみ、主要格付け会社はペトロブラスの優先債の格付けを、投資不適格水準のジャンク級に引き下げている。

ペトロブラスは資金調達が困難になったことで、建設予定だった現地の2製油所の計画を白紙化。また今後2年間で約1.6兆円の資産売却計画を発表するなど、次々に保有資産の切り売りをせざるをえない状況となっている。2008年に東燃ゼネラル石油から買収した、沖縄の南西石油も今年4月に操業を停止、油槽所にして売却する意向だ。

原油価格の下落も痛手

さらに追い打ちとなっているのが、2014年秋からの原油相場の急落である。足元では、WTIで1バレル当たり60ドル前後まで回復しているものの、下落前の100ドル超水準には遠く及ばない。

ペトロブラスの原油生産量の約3割を占めるプレソルトの損益分岐点は、生産性が高いエリアで1バレル当たり40~45ドルといわれる。足元の水準では赤字にはならないが、収益低下は避けられない。

これから焦点となってくるのは、近いうちにペトロブラスが発表するとみられる、新5カ年投資計画である。当初は2014年からの5年間で26.5兆円を投じて、原油生産量を日量320万バレルまで拡大する計画だった。が、汚職損失と原油安で大型投資が困難になったことから、「従来よりもトーンダウンする可能性が高い」と、石油天然ガス・金属鉱物資源機構の舩木弥和子主任研究員は見通す。

日本企業もブラジル事業の抜本的な見直しを迫られることになりかねない。

「週刊東洋経済」2015年6月6日号<1日発売>「核心リポート04」を転載)

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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