「3000回ほどクマに遭遇」専門家が語る対処法 襲われることが確実となった場合は首を…

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クマを追い続けて50年。これまでに3000回ほどクマに遭遇したという米田氏に、町中でクマと出くわしたときの有効手段を聞いた。「まずはとにかく動かない。目が合ったら襲われる。平野でクマを見かけたとき、電信柱や家の角、車の後ろとかに体を半分隠すと、クマは人間と認識できなくなる」と解説。

襲われることが確実となった場合については「死亡、重体に至らないように、首を手で防いで伏せるのが一番いいだろう。クマの爪は雑菌だらけ。猫に引っかかれても化膿(かのう)するように、この治療に相当苦しんだ患者がいる」と語った。米田氏自身も襲われた経験があるというが「イノシシのわなに引っ掛かったクマを外したときで、業務の中で襲われたので参考にはならない」と話した。

クマ駆除への抗議も後を絶たない。10月4日、秋田県美郷町の畳店に体長約1メートルの親グマと約50センチの子グマ2匹の計3匹が立てこもり、翌5日に駆除された。

これに対し、秋田県庁には「なぜ殺すんだ」「クマがかわいそう」などとクレームが殺到。知事は「業務妨害だ」と強調した。米田氏は抗議の電話をする人たちに関し「近年、罵声の浴びせ方がひどいと聞く。組織的に苦情をいれて、時間を遅らせてクマを助けると。行政の方は苦労して疲弊している」と口にした。その上で「中には亡くなった被害者の自宅に『山菜を採りに行ったのが悪い』とか言いがかりをつける人がいる」と憤りをあらわにした。

米田氏は「年によっては12月ごろまでクマの事故がある」と示し、今年も暖冬ならば被害が続く可能性があることを示唆した。続けて「長期的な要因として、里山が立派になって手を入れないもんだから、クマの生息域が広がった。端的に言えばクマの数が増えている。これからも事故は続くだろう」と予想した。

06年度以降で最多

環境省は1日、23年度の全国のクマによる人的被害件数が4~10月末で、18道府県で計164件、死者5人を含む計180人に上ったなどと発表した。被害件数の測定を始めた06年度以降、最多となった。東北地方の被害が深刻で、秋田が61人で最も多く、岩手42人、福島13人、青森11人と続いた。

10月の被害も13道県で59件、被害者は死者3人を含む71人に上り、同時期として過去最多。6月には島根県の70代男性がクマに襲われ右目を失明した。11月4日は栃木県那須町で犬の散歩中だった50代女性が背後からクマに襲われた。覆いかぶされ、衣服が破けて両腕に痕が残った。同16日には富山市の住宅で庭先の柿の木を伐採する作業をしていた70代と50代の男性2人が、クマに襲われ、顔や足などに大けがを負った。

(取材・構成=沢田直人)

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