現役マタギが怖れる「クマ襲撃」に起きている異変 山から人里に下りてきたクマは習性が変わる

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――人里に下りてきているクマ増加の原因をどうお考えですか。

松橋:さっきも言ったように山の餌が足りないことが大きな要因でしょうが、マタギも含めてハンターが高齢化して数が減ったことで、クマの生息数が増え、餌を得られなくなったクマが下りてきているのでしょう。

それと地域の人口が減って、昔のように里山を管理する人が少なくなってしまった。昔は藪を刈り払って見通しを良くしていたものですが、放置されたままになっている。それで山と人里の境目がわからなくなってしまったんです。

――人里近くで暮らしているアーバンベアは、世代的にはどうでしょうか。

松橋:人里で見かけるのは、体が小さなクマが多いから3歳ぐらいの若いクマでしょう。山では2歳で親から離れて単体で暮らし始めますが、他のクマとの餌の奪い合いに負けて人里に下りてきているのでしょう。

親子グマもいます。子どもが山で十分に餌を食べられないため、一緒に下りてきている。気を付けなければいけないのは、人里に下りてきた若いクマは、人を怖れないことです。山の中でマタギやハンターに鉄砲で撃たれたことがない。

そもそも人との遭遇経験がないクマが多い。だから、平然と人里近くに暮らし、餌を求めて人里に下りてきて、いざ人に遭遇するとパニックになって立ち向かってくるんだと思いますよ。

最初から人を怖れていない

――山のクマとは習性、性格が違いますか。

松橋:パニックにはなりますが、最初から人を怖れていない点がいちばん違いますね。山のクマは音がすれば逃げるのですが、人里のクマは逃げなかったですからね。人にも音にも慣れてしまっている。だから人里にいるクマは私らでも怖いですね。

マタギ
「伝説のマタギ」といわれる先代の松橋時幸氏(故人)を取材した『第十四世マタギ』(甲斐崎圭著)と、阿仁の鍛冶屋が作った山刀(筆者撮影)
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