フランスの「美食家と料理人」が挑む極上のポトフ 映画「ポトフ 美食家と料理人」の撮影裏話も
また本作には音楽がほぼ登場せず、その代わりに素材を調理する音が、音響効果としてスクリーンを彩る。
畑で野菜を収穫する音、井戸から水をくみ上げる音、肉や野菜などを焼く音、食材を混ぜ合わせる音、グツグツと湯気が立ちあがる鍋の音、鍋をかきまぜる音、忙しく厨房を移動する調理人たちの足音など、厨房の中で繰り広げられる手際のいい調理過程の数々は実に音楽的で、その音を聴いているだけでも食欲が刺激されるような気分になる。
今年10月に開催された第36回東京国際映画祭のイベントに参加したトラン監督は、この調理のシーンについて「今回描いているのは高級料理なので、その料理を美しく撮ることはできたと思う。だがそういうことはやりたくなかった。それよりも調理というアートに取り組んでいる彼らの手の動き、身体の動き、そして肉や野菜といった素材が少しずつ形を変えていくさまをカメラにおさめたかった」と明かした。
さらに「編集のときに調理をしている音を聞いていたら、そこにはまるで伴奏をするかのような音楽性があることに気付いた。料理をするときに奏でられる音というのは、とても豊かなサウンドだ。でもそこに(BGMとしての)音楽をつけるとそうした料理の音を排除することになってしまう。だから音楽は排除することにした」とその意図を説明していた。
フランスの三つ星シェフが料理監修
そんな本作の料理監修には、フランスの三つ星シェフ、ピエール・ガニェールが参加。トラン監督が考えたすべてのメニューをチェックし、その組み合わせなどを指導したほか、準備段階で、映像になった際の見栄えなどを確認するため、劇中に登場する料理を準備。観る者の五感に訴えかけるような、極上のメニューが楽しめる。
トラン監督は、本作を公私にわたるパートナーであるトラン・ヌー・イェン・ケーに捧げている。『青いパパイヤの香り』や『シクロ』などでは女優としても出演していた彼女だが、それのみならず美術、衣装、メイクなど裏方としても献身的にサポートし続けてきた。
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