フランスの「美食家と料理人」が挑む極上のポトフ 映画「ポトフ 美食家と料理人」の撮影裏話も

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そんなガストロノミーに魅了された点について、トラン監督は「ガストロノミーとはほかの芸術とは異なり、味覚に焦点を当てている。ガストロノミーのアーティストは、わたしたち一般人がはっきりと区別できない味をも峻別できる。さらにそれを混ぜ合わせ、吟味し、風味、香り、質感、濃度のバランスを測る。わたしはそんな彼らに魅せられた」と語っている。

出演は『イングリッシュ・ペイシェント』『ショコラ』のジュリエット・ビノシュと、『ピアニスト』のブノワ・マジメル。1999年の『年下のひと』で共演し、プライベートでも実際にパートナー関係にあった2人だが、本作は、2人がパートナーを解消後、およそ20年ぶりに共演したことも話題に。撮影現場では非常に良い雰囲気が流れていたというが、それは画面越しにも伝わってくる。

美食家と料理人の深いきずな

本作の舞台は19世紀末のフランスの片田舎。主人公は、食を芸術の域にまで高めた美食家のドダン(ブノワ・マジメル)と、彼のもとで20年間働いてきた料理人のウージェニー(ジュリエット・ビノシュ)。

彼女は、ドダンがひらめいたメニューを完璧に再現するだけでなく、時にはそれを凌駕するひと皿をつくり出すこともできる。ドダンだけでなく、彼女もまた真のアーティストであった。2人は確かな信頼と、深いきずなで結ばれていたが、プロフェッショナルとしての自立を尊ぶウージェニーは、ドダンのプロポーズには応えることはなかった。

ポトフ美食家と料理人
料理に対する熱い思いと信頼感で結ばれたドダン(左)とウージェニー(右)(©︎Stéphanie Branchu ©2023 CURIOSA FILMS- GAUMONT - FRANC )

そんなある時、ドダンはユーラシア皇太子の晩餐会に招待されるが、豪華なだけでそこに何の哲学もない料理に辟易してしまう。そこで自らが信じる“食”の神髄を示すために、もっともシンプルな家庭料理「ポトフ」で皇太子をもてなすことを決意する。

だがそんなある日、ウージェニーが突然倒れてしまう。ドダンは自分の手でつくった料理で、ウージェニーを元気づけようとするが――。

本作の魅力といえば次々とスクリーンを埋め尽くす極上のフランス料理の数々。その撮影には本物の料理を使用しており、そのあまりの美味しさでキャスト陣を虜にしたという。

彼らは監督の「カット」の声がかかっても、夢中になって食べ続けていたといい、しかもスタッフが「お皿を離してください」と頼むまで手が止まらなかったというから、よほどの美味しさだったと思われる。

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