インドネシア高速鉄道、愛称「ウッス」開業後の姿 富裕層が車から転移、在来線特急も根強い人気
商用運行開始後10日間の利用者数は8万7000人に達し、平均乗車率は9割を記録している。
事前には閑古鳥が鳴くといわれた平日も高い乗車率を誇っており、そもそも座席数が少ないこともあるが、割引なしのファーストとビジネスがいずれの便もまず満席となっているのも特筆すべき点だ。富裕層がマイカーから高速鉄道に転移していることがわかる。今後、どの程度の利用者数を維持できるのかが注目だ。
さて、今年の6月に試運転列車の最高速度が時速350kmに達したとき、ブディカルヤ運輸相は「遅くとも10月1日までに運行許可を与える予定、しかし、8月に前倒しになる可能性もある」と発言しており、少なくとも独立記念日(8月17日)後に無料試乗会が始まり、10月1日に商用運行が開始になる算段だったが、その通りにはならなかった。これは7月下旬、検測編成による試運転中、ハリムから69km地点の軌道に軽微な歪みが発見されたことによる。
当該地点は山間部への入り口といえるポイントで、斜面に沿った築堤上を走行しており、走り込み試験を経て、振動等により盛り土が沈み込んだものと思われる。当該区間は軌道をいったん剥がして補強のためのくい打ちを追加で行った。ちなみに同区間は、日本の専門家からもともと補強の必要ありと指摘されていた区間である。補修には1カ月程度を要し、車両基地がテガルアール(バンドン)側にあることから、同地点よりハリム(ジャカルタ)側での走り込み試験も中断されることになった。
中国色排除へ「愛称」をPR
当該地点が開通し、全線での試運転が再開されたのは8月下旬だった。無料試乗会の開始は1カ月遅れたが、事前に不具合を探知し、修繕を待ってから試運転を再開するというのは、従来のインドネシアでの鉄道整備の状況を鑑みれば大きな進歩である。
開業宣言はジョコウィ大統領の公務の都合で1日遅れの10月2日となってしまったものの、インドネシアで新規鉄道が開業する際にしばしば採られる「ソフト開業」や「無料試乗会」という手法が効果的に作用したといえる。
それどころか、商用運行開始のタイミングを中国で開かれた「第3回一帯一路国際協力フォーラム」の会期に当ててきた。フォーラム参加のために中国入りしたジョコウィ大統領は、中国の習近平国家主席と共に商用運行開始式典に出席し、中国・インドネシアの戦略的パートナーシップの成果、そして一帯一路プロジェクトの最大の成功例として高速鉄道を大きくアピールした。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら