成田修造、貧困家庭出身から成功できた意外な訳 「戦略的放任」が子どもの潜在力を引き出す

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先生から「成田、おまえはもう、しゃべるな」と叱られたときは、ささやかな反抗を試みました。書店で買ってきた『日本国憲法』を開いて、「憲法では言論の自由が保障されているので、先生の主張はおかしいと思う」と反論したのです。今思うと、本当に面倒な小学生でした。

ですが、唯々諾々と他者の意見や見方に同調せず、自分自身で考え、行動を起こすことは、自分の力を発揮するうえで、最も基本となるものだと思います。

そんなぼくに対し、母はいつも、おおらかでした。必要以上に責めたり、縛ったり、抑えつけたりすることはなく、ぼくの意思や意見を尊重してくれました。母は、自分の両親を反面教師にしていたのだと思います。

母から、「あれはダメ、これはダメ」と押しつけられたことはありません。正直、「母から(いわゆる)教育を受けた」という実感さえありません。

ですが、母がぼくを抑えつけずあえて放任したからこそ、ぼくは父の失踪後も、自我(自分で考えて生きていく力)を失うことがなかったのだと思います。母がぼくを縛りつけていたら、母と同じように依存心が強くなっていたかもしれません(母は父と共依存関係にあったと思っています)。

親のひと言が子どものあり方を左右する

子どもの性格形成は、親に大きく左右されます。だから親は、

「子どもに、自分の価値観を押しつけてはいけない」

「子どもに、余計なひと言を言ってはいけない」

と思います。

「いい大学に入りなさい」「誰もが知る大企業に入社しなさい」「安定した仕事に就きなさい」……。親が「ああしなさい、こうしなさい」と押しつけると、子どもは自分の意思にふたをするようになります。そうしないと、叱られるから。親に認めてもらうには、「親の理想通りに生きる」しかないからです。

これこそ、最も「子どもの潜在能力」を発揮させない悪手でしょう。

親の時代は、子どもからすれば「30年古い」わけです。「良い」とされる価値観も当然違う。大事なのは、「その時代時代で、自分の頭と体で感じ、学び、行動する」ことです。その力さえあれば、子どもは自然に伸びていくでしょう。

次ページ「親は子どもに気づきを与える装置」
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