鈴木宗男氏「除名」で腰砕けになった維新の迷走 「離党」で処分を見送った馬場執行部の軽量ぶり

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今回の鈴木氏訪ロも、長年築いたロシア側との多様なパイプを通じて実現したとされ、鈴木氏も「誰よりもロシアと向き合ってきた」と力説。しかも、鈴木氏の訪ロ直前の9月末には馬場代表も「大先輩の見識と行動を高く評価している」と称賛していた経緯がある。

だからこそ、今回の騒動でも「馬場氏は本音では及び腰」だったとされ、鈴木氏の「離党」であっさり矛を収めたのが実態とみられる。

ただ、党内外では「もともと鈴木氏と馬場氏では政治家としての格が違う」との声も多く、馬場執行部の軽量ぶりを露呈した格好でもある。

今回の騒動については、当初、中央紙やテレビ局は政治面や定時ニュースで大きく報じていた。しかし、最終的に鈴木氏の離党で決着すると、報道量は一気に尻すぼみとなった。これについて政界関係者は「維新の内部混乱が露呈しただけで、解散含みの混迷政局への影響は少ないのが理由では」と指摘する。

「進撃もそろそろ足踏み」に

そもそも、今春の統一地方選での大躍進以来、「進撃の維新」とはやし立てられてきた同党だが、ここにきて党内のさまざまなスキャンダルなどで政党支持率の低下が目立つ。最新のNHK世論調査でも、野党第1党を争う立憲民主より支持率が下回る結果となり、「大阪万博」や「IR誘致」への国民レベルでの不満や批判の拡大も加わって、「次期衆院選での野党第1党は困難」(選挙アナリスト)との見方も広がる。

もちろん、次期衆院選の比例代表での投票先では、立憲民主を上回っており、保守層からの期待はなお根強い。ただ、先の馬場代表の「第2自民党でいい」との発言や、大阪万博の経費増などで、「身を切る改革」の看板も揺らいでおり、「進撃もそろそろ足踏み」との厳しい見方も出始めている。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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