1ドル150円を再突破!円安と日本経済が持つ課題 日米金利差も国際収支も日本の実力が問題だ
現在、FRBは長引くインフレ退治のために政策金利を5.5%と22年ぶりの高水準にまで引き上げている。市場ではFRBが経済を必要以上に冷やしかねないこの高金利環境をいつまで継続させるかに注目が集まっていた。そうした中、FRBは先のFOMCで経済の好調によりインフレが長引くことを理由に2024年の利下げ幅見通しを1%ポイントから0.5%ポイントに縮小した。
年に4回の利下げ可能性がある1%ポイントから2回のみの0.5%ポイントになったことで、市場は2024年の11月まで利下げがない可能性を意識。高金利環境がアメリカで長期化するのに対し、日本銀行はイールドカーブコントロール(=YCC、長短金利操作)やマイナス金利などの緩和政策の撤廃がまだ進まないとみられる。
景気が強く、金利も上昇するアメリカが投資資金などを引き寄せており、ドル高を加速させている面がある。今回150円台につけるきっかけにもアメリカ国債10年物の金利が約16年ぶりの高水準で推移していることがある。
ただ、アメリカ経済も個人消費を支える所得や雇用で減速感が出ているほか、自動車業界でのストライキや政府機関の閉鎖の可能性など景気悪化のリスクはある。10月1日の政府閉鎖はいったん回避されたものの、回避に尽力したマッカーシー下院議長の解任動議が可決されるなど不透明感は増している。アメリカ自身の変調により、ドル独歩高の状況が解消する可能性もある。
国際収支の悪化で構造的な円安体質に
アメリカ経済の強さやそれに伴うFRBの政策だけでなく、日本経済にも円安を招く構造要因がある。それは国際収支の悪化による実需の円売りだ。日本はもともとエネルギー供給を海外に依存しているため、原油や液化天然ガス(LNG)、石炭などの鉱物燃料資源の価格が上がれば貿易赤字に転じやすかった。
今年はウクライナ戦争が勃発した昨年よりもエネルギー価格が落ちついたものの、今年の1~8月の原油とLNG、石炭を合わせた輸入額は2021年同期間と比べてもなお8兆円弱多い状態だ。2023年は上半期ですでに5兆1788億円の貿易赤字となっている。足元では再び原油価格が高騰しており、貿易収支の赤字要因に拍車がかかりそうだ。
経常収支は2023年上半期が8兆132億円の黒字、7月も2兆7717億円の黒字を維持している。これをもって、現在の国際収支の状況は円安要因とならないとの主張もある。しかし、問題は経常収支の黒字が日本に環流されていないことだ。
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