アサヒ、キリンの「ジャニ問題」対応にみる課題 テレビなどメディアも含めて問われる人権意識
そして、8月29日に公表された再発防止特別チームの調査報告、その後のジャニーズ事務所の会見内容を社内で精査。「事務所による明確な被害者救済と抜本的な組織運営の是正が認められない」(同社)として、取引継続は自社の人権方針に反すると判断した。
現行の契約満了をもってジャニーズタレントの起用を行わないことを決め、アサヒグループの考えと要望を事務所に伝えた。
同じ飲料大手のキリンはどうだったのか。同社は6月下旬から広告代理店を通じ、ジャニーズ事務所に対して被害者の救済と再発防止策を促してきた。
現契約の満了後に新規の契約を行わないと決めたのは9月8日。事務所の会見内容は、「具体策やスピード、当面のガバナンス体制では社会からの受け止められ方は十分とは言えない」(同社)と評価した。
判断に至るまでの情報開示が不十分
イギリスのBBCが3月にドキュメンタリー番組を放映し、4月にカウアン・オカモト氏が性被害を受けたことを告白。その後も証言する被害者が続々と現れた。そのことを考えると、もっと早く働きかけを行えなかったのかとの批判は免れない。
また、両社に共通するのが、社内外に広く自社がジャニーズ事務所に対してどのような対応を行っているのか、何を求めているのかなどを公表してこなかったことにある。ホームページなどにもまったく記載がない。
「各社はジャニーズ事務所に対する一連の要求事項を開示すべきだった。企業が求める水準を明らかにすることが重要だ」
そう指摘するのは、企業のサステナビリティ戦略などを支援するLRQAサステナビリティ代表で主席コンサルタントの冨田秀実氏。ソニーのCSR部門を率いた経験を持つ。社内外に自社の姿勢を示すことがジャニーズ事務所へのプレッシャーになると同時に、自社がしっかりと問題に取り組んでいるのだと示すことにもなるわけだ。
企業がどう人権対応を進めるべきかについては、国連が2011年に策定した「ビジネスと人権に関する指導原則」が基本となっている。この指導原則をベースに日本政府も「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定している。
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