「お金で安全、買うはずが…」アフリカ旅、衝撃結末 エチオピア「紛争」で目撃した貧困社会のリアル

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今回の相手は身長180センチぐらいの黒人だ。身体能力では引けをとるかもしれないし、拳銃を持っている可能性もある。面倒なことは避けたい。

しかし男同士は、身体の接触をきっかけに喧嘩のスイッチが入る。俺は相手を咄嗟に突き飛ばしてしまった。

ゆすりの常習犯が主張する「ビジネス」

「こいつ、ここまで案内してやったのに金を払わない」

男はそう乗客に説明をし、自分の正当性を冷静に訴えた。そして、再び俺の肩に腕をかけ俺を外に連れ出そうとする。

外に連れ出され、バスが逃げるように出発し、二人きりになったら最悪だ。その時は何をされるかわからない。

おそらくだが、こいつは喧嘩に慣れている。やり方があざとい。

今度は腕をつかんできた。ふり払おうとしたが、つかんだ腕を離さないので、バスの入り口で軽い揉み合いになった。

「こいつは案内なんて必要ないと断ってるのにずっとついて来て、金を要求しています」

バスの乗客に助けを求めた。

「同じエチオピア人から止めるように言ってもらえませんか」

だが、乗客たちは目を伏せたり無視をしたりした。面倒には巻き込まれたくないという雰囲気だ。

「運転手さん、出発してください」

運転手はエンジンをかけた。俺はドアを閉めようとしたが、彼は片足を車内に突っ込みバスの出発をさせない。

こいつは本当にタチが悪い。国境越えをした外国人目当てにこうやってゆする常習犯に違いない。

「この村は貧乏なんだ。俺には子供が4人もいる。仕事の報酬がないと暮らしていけない。俺は君をここまで案内をしたが、金を払わない。俺は真っ当なビジネスの話をしてるんだ」

彼は乗客や運転手にも訴えかけた。知性も高いようで噓もうまい。

「さっきも言ったけど、君が勝手に話しかけてきて、俺は明確に断った。ビジネスは成立していない。君がやってるのはゆすりだ」

気づけば10分以上はこのやりとり。他の乗客からも「早く出発したい」という雰囲気が醸し出される。

時間を稼ぎ、遅延の罪悪感からお金を払わせる作戦に切り替えてきたようだ。

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