「贈賄疑惑」の社長辞任で前途多難の日本風力開発 「洋上風力立地県」の秋田県知事はご立腹

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日本の洋上風力の先行きはまったく見通せない状況だ。佐竹知事からすれば、さぞ腹立たしい状況だろう。

塚脇氏の後任は、8月から社長代行をしていた松島聡氏が務める。日本風力開発設立と同時に取締役となった古参幹部だ。「ステークホルダーの皆様からの信頼回復」のため、松島新社長による経営体制で臨む。さらに、ガバナンスや贈賄に関する事実関係などについて調査を行うべく、外部専門家による調査委員会を設置する予定としている。

8月4日時点では贈賄を全否定

ガバナンスでは、日本風力開発の主要株主である「JWDホールディングス3」の動向も気になる。登記で確認できた8月31日時点で塚脇氏は、JWDホールディングス3の代表取締役だった。2021年にベインキャピタル日本法人代表の杉本勇次氏に代わって代表取締役に就いたが、同社でも塚脇氏の辞任は避けられないだろう。

日本風力開発は2003年に東京証券取引所マザーズ市場に上場。その後、東証2部に市場変更したものの、2015年にアメリカの大手ファンド・ベインキャピタルと合同でMBO(経営陣による買収)を行い上場廃止した経緯を持つ。今後、JWDホールディングス3、ベインはどう動くのか。

もう1つの注目点は、8月4日に出した会社コメントだ。「当社が、国会議員ほか公務員に対し贈賄をした事実は一切なく、この点を立証できる客観的な証拠が数点存在しています」と、コメントしていた。

報道によればその後、塚脇氏は贈賄の容疑を認めているという。東洋経済は日本風力開発に、8月4日のコメントに関して内容に変化はないのかなどを質問したが、期日までに回答はなかった。

先述したように日本風力開発が設置する調査委員会は、事実関係の調査や再発防止策の提言を行うとしている。当初、まったくの潔白と強気の主張をしていた会社がなぜ、再発防止策の提言が必要になってしまったのか。日本風力開発の急旋回ぶりに周囲は翻弄され続けている。

大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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