開業「宇都宮LRT」、黄色い路面電車への期待度 全国初の全線新設路線、車社会で定着するか
芳賀・宇都宮LRTは、インフラを市と町が整備・保有し、列車運行などは第三セクターの「宇都宮ライトレール」が担う公設型上下分離方式で運営する。停留場(駅)は起終点を含め19カ所。全線の所要時間は約50分で、ピーク時8分間隔、そのほかの時間帯は12分間隔で運行する。一部の駅は列車の追い抜きが可能で快速の運転にも対応するが、当面は各駅停車のみだ。
列車は宇都宮駅東口を出発すると、駅前から延びる「鬼怒通り」(県道64号)の中央にある軌道を走って東へと向かう。路線のハイライトといえる、全長643mの「鬼怒川橋梁」を渡ると、内陸型工業団地としては国内最大規模という清原工業団地内を通って芳賀町へ。終点は同町の芳賀・高根沢工業団地内に位置する。全線14.6kmのうち、路面を走るのは約9.4km。鬼怒川橋梁やその前後の区間、交通量の多い交差点を通過する高架区間などの約5kmは専用区間を走る。
車両は国内の路面電車では最大級の、3車体をつないだ全長約29.5mの「HU300形」を17編成そろえた。床面が低く段差なしで乗り降りできる低床車両で、このタイプの車両としては車体幅も国内最大の2.65mだ。片側4カ所ずつのドアにはすべて運賃支払い用のICカードリーダーを備えており、交通系ICカード利用者はどのドアからでも乗降できる。
構想30年、度重なる開業延期
LRT構想の始まりは30年前にさかのぼる。課題となっていたのは、宇都宮市東部の工業団地へ向かう道路の深刻な渋滞だ。栃木県と市は「新たな交通システム」の検討を進め、2003年に発表した報告書でLRTが最適であるとの方針を示した。
その後、宇都宮市は2008年に将来の人口減少・少子高齢化などを踏まえた街づくりの方針として「ネットワーク型コンパクトシティ(NCC)形成ビジョン」を打ち出し、この中でLRTは市の東西をつなぐ基幹交通に位置づけられ、新たな交通機関という枠を越えた「まちづくりの軸」という色彩を強めた。2013年3月にはLRTの導入を明記した「東西基幹公共交通の実現に向けた基本方針」を策定、同年には芳賀町とともに事業化に向けた検討を開始した。
着工したのは2018年。当初は2022年3月開業の予定だったが、用地買収などの遅れから翌2023年春に延期、さらに一部区間の工事の遅れで8月にずれこんだ。
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