韓国では「汚染水」、原発処理水を巡る激しい反応 政争の具にされているが、日本より議論は活発

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アメリカのTHAAD(高高度防衛ミサイル)を配置することを決定した朴槿恵政権時、配置された付近の作物にTHAADの電磁波が影響するというフェイクニュースが流れた。前出記者が続ける。

「このフェイクニュースは野党が垂れ流したものですが、これにより瓜栽培業者は大きな被害を被りました。今回も韓国の多くの国民はまた同じ手法だとわかってはいるでしょうが、ただ、史上初めてといえる、事故が起きた原発汚染水の海洋放出による海洋や水産物などへの安全については科学的な根拠があってもなかなか不安はとりのぞかれないのが現実です。こうした消費者の不安を取り除く努力を日本は見せなければならないのではないでしょうか」

周りの知り合いに訊いてみると、「気にしない」と言う人もいたが、「子どもには食べさせられないよね」や「しばらく水産物は買わない」という人もいた。

日本政府に今、求められていること

韓国政府は世論を鑑みて、5月末に原子力の専門家を福島に派遣し、以来、科学的な情報を公開し、毎日ブリーフィングもしてきた。その成果もあってか、「当店ではほぼ回復状態にありましたが、そこへ放出開始が決定しました」と前出の寿司店社長は言う。

尹大統領は、8月18日、日米韓首脳会談後、処理水の海洋放出について、「科学を基盤とした透明な過程を通して処理されなければならない」と言及し、一方、国民の不安を取り除くために韓国政府は独自に、「水産物の放射能検査件数を増やし、魚介類などへの放射能管理システム運営を強化する」ことを発表している。

日本でも消費者の不安は残されたままという報道もあるが、そうした消費者の不安をとりのぞくために求められるのは、処理水の安全性についての「透明性」を公表していくほかないだろう。そうした情報公開を日本政府は今後どんな形で行っていくのか、今一度、明確に発表してほしい。

それにしても、処理水を海洋放出する日本よりも、たぶんに政治化したこともあるが、韓国での議論のほうがよっぽど活発なように見える。韓国から見ていると、日本メディアもすべてではないがどこか他人事のように報じているように見える。

菅野 朋子 ノンフィクションライター

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かんの ともこ / Tomoko Kanno

1963年生まれ。中央大学卒業。出版社勤務、『週刊文春』の記者を経て、現在フリー。ソウル在住。主な著書に『好きになってはいけない国』(文藝春秋)、『韓国窃盗ビジネスを追え』(新潮社)がある。

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